鉄道旅行の達人が披露するとっておきエピソード

リスボンが誇る2つの世界遺産、ジェロニモス修道院とベレンの塔には、かわいらしい市電に乗って出かけたい。栄華を極めた大航海時代のポルトガルの記憶が、この地にはしっかりと刻み込まれている

 著者の櫻井寛氏は、1954年生まれのフォトジャーナリスト。昭和鉄道高校から日大芸術学部写真学科に進んだというから、まさに鉄道写真家として理想のキャリアを踏んできたといえよう。

 これまで取材した国は86カ国、海外渡航回数は215回以上を数える。『鉄道世界遺産』(角川書店)、『世界豪華列車の旅』(小学館)、『世界の絶景鉄道に行こう』(学研パブリッシング)、『宮脇俊三と旅した鉄道風景』(ダイヤモンド社)など著書は多数。

 本書には、著者自身が巻き込まれたトラブルや、現地の人々との交流において文化のギャップに戸惑ったエピソードなどもふんだんに盛り込まれている。

 被害総額350万円(!)の置き引きに遭ったり、標高2200mの氷点下近い気候の中、Tシャツ1枚で震えたり、列車でたまたま隣に座った老人の朝食・昼食・アフタヌーンティーをなぜか毎回おごることになったり……。これらの文章は、エッセイとしても非常に面白く、旅の安全のための情報としても大変有用だ。

 ページをめくるたび、鉄道と世界遺産という最高のマリアージュに魅了されることだろう。写真と文章を堪能しながら、旅行気分に浸りたい。

『人気鉄道でめぐる世界遺産』
櫻井寛著
発行 PHP研究所
定価 ¥1365
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2013.08.30(金)