撮影では、静かな日常を繊細に切り取るような映像を目指した

 その言葉通り、家族との何気ないやりとりのリアリティは見事。心の機微を丁寧にすくい上げるのんさんのセンスが随所に光っている。

 「俳優としてお芝居をしているので、日々、人の反応は注意して見ている気がしますね。劇中で描かれるヒロインのお母さんは、私のお母さんと似ています。娘からすると気兼ねない存在ではあるけれど、何をするか分からないから気が抜けない、みたいな。身近だからこそ苛立ったり、警戒したりする様子を表現できたら面白いだろうなと思いました」

 さらにこだわったのは、岩井俊二監督作から大きな影響を受けたという繊細な映像表現。

 「岩井監督の作品が好きなのは、静けさの中に主人公の痛みや切なさや物悲しさが漂っているところ。映像のトーンやムードを参考にしました。

 現場では、スタッフさんがレールを使ってダイナミックに映像を撮ってくれたシーンがあったんです。でも私は静かな日常を繊細に切り取ってほしくて、妥協せずに想いを伝えました。改めて、人に伝えるって難しいなと思いましたね。こだわりが強いので嫌がられていたかもしれません(笑)」

次のページ 監督目線からのんは信頼のおける役者です(笑)

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。