グラタンコロッケバーガーと書きたかったんです

――CREAでの連載スタートは2014年の春(2016年5月号までの連載タイトルは「今月の踏み絵」。『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』として単行本化)。最初スーさんは40歳、ちょうどCREA読者と同世代の感じでしたが、当時と最近では、誰に向けて書いているか、変化はありましたか?

 あの時、まだ40歳だったのかぁ。CREAの読者はなんとなく、一緒に歳を重ねている気がしてますから、書き方を変えているということは一切ないです。連載中も、テーマによって、これはCREA、これは婦人公論、これはAERA、というふうに自然に書き分けてましたね。

――久々にシングルになった後、引っ越し先にロフトベッドを買おうか迷うが、ベッドの耐荷重が100kgなので次の恋愛に心配……というエピソード(「耐荷重は100キロまで」)、雑誌連載では女友達の体験談とされていたのが、単行本ではスーさん自身の話ということになっていましたね。

 そう、実は自分の話だったんですけど、戻しました。連載の時は、まあ、直後だったし、相手のいることでしたしね。今回単行本で自分の話としたのは、事実を書く勇気とかいうより、どっちが面白いかってだけかも。自分の話として書いた方が、読む人も面白いと思ってくれるんじゃないかと。露悪的なんですよね、根が。

――細かいところでは、”地球滅亡前日、最後の晩餐”の話で、軽度のグルテンアレルギーのスーさんが普段は避けないといけない小麦粉のかたまりの例として、連載では「グラタン」だったのが単行本では「グラタンコロッケバーガー」に変わっていたのに気が付いて笑いました(「地球滅亡前夜がいちばん自由」)。より小麦粉度と糖質量がグレードアップ。

 グラタンでコロッケでバーガー、糖質のかたまり! それは最初からグラタンコロッケバーガーと書きたかったのが、雑誌では文字数が足りなくてグラタンにしてたんですね。……よく覚えてるよね私も! 校正の時ゲラを見て「これは本当はグラタンコロッケバーガーだったんだ!」と。

2022.02.22(火)
文=CREA編集部
撮影=深野未希