「おばさん」を侮蔑の意味で使うのは許さんぞ、と

――ところで、CREAの連載の最後となった回(『私はちょっと怒っているんですよ』)では「おばさん」というワードについて綴られています。

「おばさん」といわれてしょげ返るのは、誰かの思う壺だもの。楽しい中年ことおばさんである私は、これもシレッと覆そうと画策中であります。

――雑誌でこの回を執筆されたのは、スーさんと堀井美香さんのポッドキャスト「OVER THE SUN」が始まる直前の頃。ネガティブに使われがちな「おばさん」という言葉を純粋に中年世代の女性に親しみを込めた言葉として取り戻そうというのもOVER THE SUN(オーバーザサン→おばさん)のテーマのひとつ。ここでOVER THE SUNのことを予告されていたんだと後からわかりました。

 私も自分のことをことさら「おばさん」と言うわけではないですよ。友達同士や、それこそ堀井さんと冗談まじりで自分たちのことを「だからおばさんは!」と言うくらい。でも、これを他人が侮蔑の意味で使うのは許さんぞ、と。

――女性だから・男性だからを超えて、人として正しく、強くしたたかであろう、というのがスーさんの芯にあると思うんですが、これはいつごろ培われたものですか。

 少しずつじゃないかな。やっぱり最初のうちは人にOKをもらうために一生懸命頑張ったし、下手(したで)に出ることで認めてもらいたい好かれたいというのもあったけれど、やっぱりそういうのは往々にして功を奏さない、というのをやりつくしてからじゃないですかね。30代後半までやってたな。世間に好かれようとして、世間的な価値観や物差しで計られて合格することっていうのを、まだ切望してましたね。

――スーさんでも、30代までそうだったんですか! 意外でした。

 今ではもう、そこに対する“握力”、執着力がなくなったんですよね、もういいやって。この握力がなくなったのと、頑張って他者の価値観から逃れようという「自分は自分」という気持ちが、多分ちょうど真ん中で来たんじゃないかな、40代半ばぐらいで。もう自分に対する執着心がどんどんなくなっていく握力が減っていく! と、両方の手が離れたのが真ん中ぐらいで、まあ、したたかにやった方がいいわよっていう感じになってます。

マンハッタンに住む! という夢は、ずっとあります

――将来の展望、やりたいことはありますか?

 60歳くらいでアメリカ、NYのマンハッタンに住む! という夢は、ずっとあります。他にはあまりない。仕事量をガッツリ減らして、スケジュールを整えないとなというのはありますね。今現在は、オーバーワーク。

――この2年弱のコロナ禍で、スーさんの生活、働き方は変わりましたか?

 コロナによって変わったというよりは、緊急事態宣言のときに在宅でラジオをやったり、いろいろな雑誌が1号休みになって連載が休みになったりと、ちょっと余裕のある生活を経験してしまったために、人間らしいあの生活に戻りたいと気付いてしまった、というのはありますね。今まためちゃくちゃ忙しくなっちゃって。仕事に生活がゴリゴリ削られる生き方は、このあと10年はやめようと思ってます。来年の50歳からの10年の働き方、真剣に考えてますけど、まだ答えは出ませんね。

――2022年もこんな忙しさが続く感じですか。

 そうなんです、ありがたいことに単行本もまた連続する予定で、そんないっぺんに買ってもらえないよ、売り逃しだよ! とも思いますが。推しも頑張っているし私も頑張らないと。

――スーさん、推しのお話になると、明らかに目がキラーンと光って、声にハリが出ていらっしゃいますよね。

 そう、いつもインタビューでも推しのことを聞かれると、こんな顔になっちゃって。どうかしてますね。

――読者に一言伝えるとしたら、何でしょう。

 好きなように生きろ!

ジェーン・スー

1973年、東京生まれの日本人。作詞家/ラジオパーソナリティ/コラムニスト。2015年、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~木、11:00~13:00)が放送中。またポッドキャスト「ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN」を毎週金曜17:00に配信中。

著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文春文庫)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮文庫)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎文庫)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)、『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない 愛と教養のラブコメ映画講座』(高橋芳朗との共著/ポプラ社)、『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)など多数。

ひとまず上出来


定価 1595円(税込)
文藝春秋
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2022.02.22(火)
文=CREA編集部
撮影=深野未希