素のモードと仕事モードの間で起きたバグ
――普段はお芝居の現場でカメラの前に立つことが多いと思いますが、役を背負わないまっさらな自分自身の姿をカメラで撮られる感覚は?
恥ずかしいです! どういうスタンスで立っていればいいのかもわからなくなるくらい。役を演じているときは、よくも悪くも「自分じゃないし」という感覚があるので、何をやっても役のせいにできるんです。
でも今回、「はい、桜井さんお願いします」と言われたときに、そわそわする感覚はすごくあって。ただ、カメラマンのND CHOWさんが「その場所に立って、自由に動いてください。いいと思ったところを僕が切り取りますから」と、すごく頼もしい言葉をかけてくださったので、普段の映像の現場と別物にしなくていいんだと思えました。もちろん最初は緊張しましたけどね。でも、写真集は今後何冊も出すものではないですし、もう、腹をくくりました(笑)。
――まだ俳優じゃなかった頃の記憶が濃密に残っている場所での撮影は、特に緊張しそうですね。
バグが起きましたね(笑)。「おばあちゃん家にいるモードの素の私は本来この顔だけど、今は桜井ユキとして仕事で撮られているんだよな」……って。でもその境目が、面白いことにどんどん曖昧になっていくんです。場所の香りの威力ってすごいですね。自然と普段の「おばあちゃん家にいる私」の顔に引っ張られていって、取り繕えなくなる感覚がありました。その時間はすごく心地よかったです。
完成した写真を見せていただいたときは、ちょっと恥ずかしくなりましたし、むずむずする感覚もありましたが、自分の感性の原点の地で撮影できたことは、とても感慨深い気持ちになりました。
桜井ユキ(さくらい・ゆき)
1987年2月10日生まれ。福岡県出身。最近の出演作にドラマ「イチケイのカラス」、「真犯人フラグ」、映画『コンフィデンスマンJP』、『マチネの終わりに』など。NHKよるドラ「だから私は推しました」で第46回放送文化基金賞演技賞受賞。
桜井ユキ ファースト写真集『Lis blanc』(リス・ブロン)
2021年12月22日(水)発売
撮影 ND CHOW
定価 2,970円(税込)
SDP
http://www.stardustpictures.co.jp/book/2021/lisblanc.html
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)
2021.12.22(水)
文=松山 梢
撮影=杉山拓也
ヘアメイク=石川奈緒記
スタイリスト=李靖華