キュートな男の子から幅広い役柄を演じ分ける俳優へ

 17歳でデビューして間もなく、瀬戸康史さんは若手男子俳優の中で一気に頭角を現しました。当時のインタビューでは、笑うと口角がキュッと上がるキュートな表情で、「人見知りを克服したい」「わりと中身は男っぽいんです」と、外面と内面のギャップをあけすけに話してくれたことが印象に残っています。

 それから10年以上が経ち、33歳になった瀬戸さんは、自身に求められた役割を的確に果たす、安定感のある大人の俳優として活躍し続けています。『ルパンの娘』では、2シーズン続いたドラマシリーズと、その最終章となる映画『劇場版 ルパンの娘』において、深田恭子演じる主人公・華のロマンスの相手役・桜庭和馬を演じています。強烈な世界観と個性的な共演者の中で、バランサーに徹しつつ、吹き替えなしのアクションで強い印象を残しました。

 今後は、舞台『彼女を笑う人がいても』(作:瀬戸山美咲、演出:栗山民也)や、映画『愛なのに』(監督:城定秀夫)など、「ルパンの娘」とはまったく毛色の異なる主演作が控えています。瀬戸さんの落ち着いた受け答えから、仕事に対する自信と充実感が伝わるインタビューとなりました。

戦うシーンがあっても殴られる一方の役が多かった

――『劇場版 ルパンの娘』の舞台挨拶で、「もう2回も観た」とおっしゃっていました。俳優さんで、公開前に何度も観る方にあまり会ったことがないのですが、瀬戸さんにとっては当たり前のことなのでしょうか?

 そのときはまだ(作品が)完成していない状態だったんです。完成後のものを試写で観たので、2回になりました。取材が入る時期が完成後であれば、1回だったと思いますが。

 テレビの画面とスクリーンとでは、全然違いましたね。音も違うし、映像の迫力も違う。これは絶対にスクリーンで観るべき作品だと思いました。

――瀬戸さんは今回、アクションチームと一緒にアクションシーンを作り上げていったそうですね。すべて吹き替えなしで、ご自身でやられているとか。

 はい。アクションはシーズン1から1話につき1シーンはあったので、そのたびに練習していました。その積み重ねのおかげで、アクションチームとは良いチームワークでできたと思います。

 劇場版でもアクションシーンの数が多かったので、物理的に「これはできる」「これはできない」と話し合いながら作っていきました。僕の能力に合わせてレベルを下げるのではなく、「これも挑戦してみよう」と、アクションシーンとして成立する方向に導いてくれました。

――もともと、アクションシーンに対する意欲は強くありましたか?

 はい。でも、長い時間戦う本格的なアクションは「ルパンの娘」が初めてです。以前は、戦うシーンがあっても殴られる一方の役が多かったので(笑)。

 今回はちゃんと組技といいますか、相手との呼吸を合わせて“魅せる”アクションに挑戦できました。そのために体も鍛えて、10kg以上体重を増やしました。細すぎると自分の体がアクションに耐えられないんです。相手を持ち上げなければいけなかったので、筋力もつけました。

――その後もトレーニングは続けていますか?

 筋肉ってキープしようとするとものすごくしんどいので、今は何もしてないです。次の役に筋肉は必要ないので。今は少し落としています。

2021.10.29(金)
文=須永貴子
撮影=平松市聖