あの時は自分なりに、葛藤があったんでしょうね
――和馬役もそうですが、父親役を演じてまったく違和感のない俳優になりました。瀬戸さんがデビューした頃はかわいい系の役柄が多く、当時のインタビューで、内面の葛藤を率直に語っていたことが印象に残っています。あの頃の自分をどう思いますか?
今思うと、あの頃はそれしかなかったんだなと思います。容姿的な魅力しかなかったから、仕方がないなって。あの時は自分なりに、葛藤があったんでしょうね。今は、舞台も含めていろんな作品に携わらせてもらって、お芝居というところで見てくれる人が多くなってきました。それがとてもうれしいし、本当に幸せなことだなと思います。
――現在に至るまでに、転機はありましたか?
ある何かとの出逢いでガラッと変化するということはなく、徐々に徐々に変化していった感じです。いただいた仕事に、真面目にコツコツ取り組んできたことが、今につながってるんじゃないかなと思います。
――舞台『彼女を笑う人がいても』は、「ルパンの娘」とはがらりとテイストが変わりそうですね。
はい。方向性をひとつに絞る必要はないですし、ひとつの畑だけにいてもおもしろくないし。いろんなことをやってるほうが楽しいです。
――舞台に出演する目的というのはあるのでしょうか?
10代から舞台をやってきて思うのは、舞台はやはり学びの場でもあります。今回だったら安保闘争など、テレビドラマではなかなか触れる機会のない作品も多い。そういう意味で、刺激にもなりますよね。
――仕事の楽しさはどんなところに感じますか?
役を作ることも、監督たちと話し合って作品を作っていくことも楽しいです。今回だったら、アクションチームとアクションを作り上げる過程がとても楽しかったです。
――オフの過ごし方や、オンとオフの切り替え方にも変化はありますか?
空いた時間には絵を描いたりゲームをしたり、自分の好きなことをしています。でも、そもそも僕の中に、オンとオフっていうものがあまりないかもしれないです。頑張ろうとは思うけど、張り切りすぎないっていうことですかね。
僕の場合は、ちょっと余裕を持っている自分というか、自分を客観視している自分がいたほうが、いい状態なんです。あくまでも僕のやり方は、ですけどね。
瀬戸康史(せと・こうじ)
1988年生まれ、福岡県出身。2005年デビュー。17年舞台『関数ドミノ』にて、第72回文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞。主な出演ドラマに、「透明なゆりかご」(18 NHK)、連続テレビ小説「まんぷく」(18-19 NHK)、「私の家政夫ナギサさん」(20 TBS)、「男コピーライター、育休をとる。」(21 WOWOW)、映画に『寝ても覚めても』(18)、『事故物件 恐い間取り』(20)など。舞台では、前川知大、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、寺十吾、三谷幸喜らの作品に出演。今年12月には栗山民也演出の舞台『彼女を笑う人がいても』(脚本:瀬戸山美咲)、22年2月25日には映画『愛なのに』(監督:城定秀夫)への出演を控えている。
劇場版 ルパンの娘
伝説の泥棒一家・Lの一族が突然、泥棒引退を宣言! 最後の大仕事のために、ティーベンブルク王国へ向かった彼らだったが、謎の敵“JOKER”に嵌められ、一族崩壊のピンチに!
そして、一族の娘・華は、もう一人のLの一族・玲の存在、さらには自身の出生の秘密を知ることに……。Lの一族、玲、そして華。すべての真相には、決して盗み出せない家族の絆があった――。
出演:深田恭子 瀬戸康史 橋本環奈 観月ありさ 渡部篤郎
原作:横関 大『ルパンの娘』シリーズ(講談社文庫刊)
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fAKE
主題歌:サカナクション「ショック!」
製作:フジテレビジョン
制作プロダクション:シネバザール
配給:東映
©横関大/講談社 ©2021「劇場版 ルパンの娘」製作委員会
2021.10.29(金)
文=須永貴子
撮影=平松市聖