「昨年、公演がすべて止まったとき、また舞台に立てる日が来るのか不安だった」

――珠城さんが退団を発表したのは、昨年の3月。当初の予定では退団は今年2月のはずでしたが、コロナ禍で公演スケジュールが大幅に変更になり、結果的に退団時期が半年ずれました。退団公演が無事おこなえるかという不安もあったと思いますし、退団までの1年あまりはどのようなお気持ちで過ごされていましたか。

 昨年、公演がすべて止まったとき、ちょうど月組は『WELCOME TO TAKARAZUKA—雪と月と花と—』『ピガール狂騒曲』のお稽古中でした。ほぼ出来上がっている段階ですべてがストップして、そこから幕が開くまでに約4カ月。公演期間を組み直したこともありましたし、再開してからまた稽古期間が1か月以上。月組が一番長く止まっていたんです。

 その期間は私にとってはとても長く、無気力みたいになっていたこともありました。退団が延びたこともですけれど、それ以前に、また舞台に立てる日が本当に来るのか、ということのほうが不安でした。

 劇場の再開はいつになるのか。何か月先か1年先か。どれくらい舞台に立てないのだろうとか、そういうことまで考えました。

――どんなことをされていたんですか?

 いろんな映画を観たり、韓流ドラマを観たりして過ごしていました。じつは、そこでBTSにもハマったんです(笑)。

 彼らのその音楽ももちろん素晴らしいですが、等身大の彼らの姿に胸を打たれるものがあったんですよね。今やもうワールドスターですが、等身大の青年として悩んだりしている普段の姿も、結構いろんなメディアでさらけ出しているし、インタビューなどでも話していて、それにすごく共感しました。

 それこそコロナ禍の影響で、日本だけじゃなく世界中でエンターテインメントだったり……いろんなものが止まったわけで、それは彼らも同じ。自分と同じ思いをしている人はたくさんいて、それどころか、より過酷でしんどい思いをしている人たちがいるってことに思いが至って。

 そこから、もうなるようにしかならないなって、いい意味で諦めがつきました。自分は命があって、日々生きていくことができる。そのことのありがたみを実感して、とにかく今やるべきことにコツコツ向き合っていこうと気持ちを切り替えられてから、自分を取り戻していった感じです。

 同じような状況に置かれた俳優やアイドルの方々がファンに向けて発信しているメッセージなども見ました。宝塚ファンの方々にとっては、私達の存在が励みになるのかもしれない。その方たちのために自分も頑張ろうって思えたことも、前を向く力になった気がします。

» インタビュー【後編】へ続く

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シャツ 60,500円、パンツ 60,500円/エリコカトリ(ムール 03-5787-8911) コート 72,600円/リト(03-3470-4157) リング、ブーツ/スタイリスト私物

宝塚歌劇 花組・月組100th anniversary『Greatest Moment』

1914年に宝塚の地で誕生した宝塚歌劇団。花組と月組の2組から始まり、現在のような組制度が確立したのは1921年のこと。花組、月組の設立から100周年を記念しおこなわれるスペシャルな公演では、それぞれの時代を彩ってきた花組と月組のスターたちが集結し、懐かしい楽曲を披露する。日替わりで出演者が入れ替わり、往年の名コンビなどが観られる公演としても注目度が高い。2021年11月3日(水・祝)〜11月7日(日)梅田芸術劇場メインホール、11月13日(土)〜22日(月)東京国際フォーラム ホールCにて上演。11月13日(土)、20日(土)、21日(日)にライブ配信あり。
https://www.umegei.com/greatest-moment/

珠城りょう(たまき・りょう)

2008年に宝塚歌劇団に入団し、『ME AND MY GIRL』で初舞台。月組に配属され、入団3年目には、若手の試演公演である新人公演で主役に抜擢される。13年には『月雲の皇子』で、バウホール公演初主演、16年に月組トップスターに就任。入団9年目でのトップスター就任は、宝塚では歴代二番目に早い抜擢となった。翌年の『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』で大劇場公演お披露目公演。その後、『All for One』や『BADDY—悪党は月からやって来る—』などの話題作をはじめ、『雨に唄えば』『エリザベート—愛と死の輪舞』『ON THE TOWN』『I AM FROM AUSTRIA—故郷は甘き調べ—』といった海外ミュージカル作品に数多く主演。今年8月15日に、『桜嵐記』『Dream Chaser』千秋楽をもって退団。来春、東京・大阪にて待望のソロコンサートが決定!

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賞品 珠城りょうさん直筆サイン入りポラロイド写真
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2021.11.03(水)
文=望月リサ
撮影=鈴木七絵
動画=松本輝一
ヘアメイク=赤松絵利(ESPER)
スタイリスト=重光愛子(A.K.A.)