宝塚歌劇団トップスターとして活躍し、今年8月15日に歌劇団を退団したばかり。その珠城さんの退団後1作目は、宝塚歌劇団の花組と月組の100周年を記念しおこなわれる、祝祭感あふれるOG公演『Greatest Moment』だ。

 大きな話題となった退団公演について、退団後の今、退団後初めて舞台に向かう想い、そしてこの先のこと……。ストレートな思いを語っていただきました。

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「退団してすぐのタイミングでOG公演に出られるなんて思ってもみなかったです」

――退団のときに、その後の進路を明言されなかったこともあって、また珠城さんが舞台に立つ姿を見ることができるのかなと思っていました。なので今回、「宝塚歌劇 花組・月組100th anniversary『Greatest Moment』」への出演が決まり、今後も舞台人として活躍してくださることを期待しているのですが。

 やはり15年以上の時間をエンターテインメントに捧げてきて、自分にはこれしかないっていう気持ちが大きかったです。

 その中で出会った方々が、また私が舞台に立つ姿を見たいと、待ってくださっているのであれば、今まで自分が積み上げてきたものを生かして、もう少し頑張ってみようかなと。

 だから需要がなくなったらというか、自分がこの世界ではもう必要とされないなと思ったら、スパッといなくなるかもしれません。もちろん演じることは大好きですが、こういう俳優業というものは、求められたり必要とされるからこそ、というところがあると思うので……。

 これからどうなるかわからないですけれど、自分にまだまだ挑戦してみたいと思うものがあり、ファンの方が退団後も応援したいと思ってくださる気持ちがあって、それが合致しているからこそ踏み出せたというのは大きいかもしれないです。

――『Greatest Moment』への出演を決められたのは?

 最初にも申し上げたのですが(インタビュー【前編】)、夢から醒めたような不思議な気持ちでいる最中に、出演のお声掛けをいただいたんです。

 まさか退団して、そんなに日も経っていないタイミングで、OG公演に出られるなんて思ってもみなかったですし、錚々たる先輩方が出演されるステージに、自分が一緒に立っていいのかなという不安もあり、正直、出演を決めるまでにはちょっと悩みました。

 でも主催の梅田芸術劇場の方が、私(珠城さん)が、花組・月組が100周年を迎えた年に在団していて、かつOGでもある唯一の人なのでぜひ、と言ってくださって。

 素晴らしいOGの皆さんに比べ、まだまだ未熟であることは変わりないですが、きっと何か新しいことに挑戦できるし、今後の自分にとっても勉強になるんじゃないかと思って、先輩方の皆様の胸をお借りするつもりで、出演を決めました。

「瀬奈さんや霧矢さんと出させていただくなんて、こんなご褒美をいただいていいのかな」

――お稽古の様子はいかがですか。

 久しぶりの方々ばかりで、すごく不思議な感覚です。でも、なぜか久しぶりな感じがしないのは、宝塚特有のものなのかもしれませんね。

 もちろん、今回が初めましての方もいらっしゃいますけれど、それでも家族みたいな雰囲気があって、皆さんすごく温かく迎えてくださって、やっぱり宝塚ってすごくあたたかいところなんだなっていうことを、卒業しても実感できたことが、純粋に嬉しかったです。

――久しぶりに歌ったり踊ったりされてみて、いかがですか?

 1カ月半ぶりだったのですが、その分の汗を流したんじゃないかっていうぐらいの消費量でした。でも、トップになる前だから約5年ぶりくらいだと思いますが、誰かの後ろで踊るっていうこと自体が久しぶりだったんですね。それが、なんだかとても心地よかったです。

 もちろん自分がトップとして中心にいたときも、みんなと振りを合わせることは意識しながら踊っていましたが、それとはまたちょっと違う感覚。

 しかもそれが、自分の大尊敬する先輩で、その方と一緒に踊っている。その感動と興奮とかも含めて、すごく不思議な気持ちになりましたが、でもとっても心地よくて、心強くもあり、何だかとても不思議な時間でした。

 月組で、トップスターとして、その背中を見させていただいていた瀬奈(じゅん)さんや霧矢(大夢)さんと一緒に出させていただく場面もあり、こんなご褒美をいただいていいのかなと思っています。

2021.11.03(水)
文=望月リサ
撮影=鈴木七絵
動画=松本輝一
ヘアメイク=赤松絵利(ESPER)
スタイリスト=重光愛子(A.K.A.)