歌手・中島美嘉、20年間の心境の変化とは

 前編では、20周年を迎え、最初は3年で辞めると思い込んでいた少女が、なぜ20年も歌うことを続けられたか、その理由を探った。後編は、コロナ禍での心境の変化を中心に話を聞いてみた。

――20代は多忙だったでしょうし、15年前は今よりも、「ワークライフバランス」が軽視されていた時代です。自分の内面について、ケアをする時間がなかったのもしんどかったのではないですか?

中島 仕事にかまけすぎたという意味だけでなく、メンタル面は、ずっとしんどかったです。20代はとくに。私は、マイペースなイメージを持たれがちですが、この仕事をやり始めてからは、実際にマイペースに生きたことなんかないです。ただ、マイペースな人だと認識されると、あまりいろんなことを詮索されないんです(笑)。

 「ラクそうに生きてる」って思われた方が私自身ラクだったので、それについてはとくに訂正しないままでした。ただ、20代の頃は、自分を磨くなんて考えたこともなかったんですが、この歳になると体のことや心のことをケアしないと、とんでもないことになるので、やるようにはなりました。

――それはいつぐらいからですか?

中島 最近ですよ。コロナ禍になってからです。そのちょっと前に、「今変わらないと自分が無くなっちゃいそうでまずいぞ」と思ったタイミングがあって、コロナ禍になって、外出しなくなって、自分に向き合える時間が増えた。そこから、毎日の自分のプランを決められるようになりましたね。

 具体的なことで言うと、昔は、太る暇もなかったというか、家系的にも太る体質じゃないと思い込んでいたんですが、コロナ禍で見事に太ったんです(笑)。それもあってちょっと慌てました。35歳を超えると、体形の変化が如実に出るんですね。昔から、よく周りの人に「少しは体の悲鳴に耳を傾けなさいよ!」って言われていたんです。でも、短期間で5キロ太って、「そうか、体の悲鳴ってこういうことか」と。

――今日お会いした限りでは、以前より体重が増えたようには見えないのですが。

中島 そこから、3カ月ぐらいかけて元に戻しましたからね。でも、私も、最初は太ったなんて気づかなかった。姉が私の家に遊びにきたときに、突然パシャって音がするから姉の方を見たら、「今の自分の体、横から見たことある?」って、自分の隣に座っていた私の写真を見せてくれたんです。

 私、椅子に座るときに、両足を抱える癖があって。椅子の上で体育座りをする感じなんですが、その写真を姉が撮って「やばいよ」って言うんです。「こんなになったことある?」って見せられた写真を見て、全体のラインがダルマみたいで(笑)。「これ、すごいね」ってビックリしました。それは、姉にしかできない忠告だったというか……。愛情なんでしょうね(笑)。

2021.10.28(木)
文=菊地陽子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=小林潤子(オーガスト)
スタイリスト=松尾明日香