「かわいー! 三つ編みじゃん」(石原)
「してもらっちゃった」(稲垣)
取材現場に現れた2人は顔を合わせるなり、劇中の親子さながらの仲のよさを見せる。
石原さとみさんが最新作『そして、バトンは渡された』(10月29日公開)で挑んだのは、シングルマザーでキャリア初となる母親役。稲垣来泉さん演じるみぃたんの血の繋がらない母親で、目的のためには手段を選ばない魔性の女・梨花に扮している。
「初の母親役ではありますが、梨花とみぃたんは母娘というより友達感覚が強かった気がします」と語る石原さん。お互いを「くるみん」、「さとみちゃん」と呼び合うにぎやかな対談をお届けします。
撮影前のスキンシップと“似顔絵缶バッジ作り”
――ドラマ『アンナチュラル』では石原さんが演じた雨宮美琴の幼少期を稲垣さんが演じていましたが、当時から面識はあったのですか?
石原 ドラマの時は会っていないんです。実際に会うのは今回の映画の撮影が初めてでした。
稲垣 いろんなテレビでさとみちゃんを観てきたので、共演すると聞いた時は絶対に楽しいだろうなって思いました。きっと、ずっと笑ってるだろうなって。
石原 あはは! 予想通りだったね。前田(哲)監督の発案だったと思うんですけど、クランクイン前に2人の時間を作ってもらったんです。
稲垣 どんなことをするんだろうって……。
石原 ね、思ったよね。3〜4時間くらいかな。一緒に過ごしたんですけど、くるみんが手作りの缶バッジが作れる機械を持ってきてくれて、お互いの似顔絵を描いたんです。
稲垣 (実際にバッジを持ってきて)これ、さとみちゃんが描いたやつ。
石原 私の絵心、ヤバいね(笑)。くるみんが描いてくれた私の似顔絵のバッジは、キーケースに付けて使ってます。バッジを作った後、監督も巻き込んで鬼ごっこもしたよね。
これまで夫婦役を演じる時とかに、「今日一日ずっと手を繋いでいてください」と言われて準備することはあったけど、親子を演じる上で準備をすることはこれが初めてでした。
クランクインで「初めまして」となるよりも、くるみんがどういう風に笑うのか、どういう体温をしているのか、触れ合う時間があったことは親子を演じる上ですごく役立ったと思います。他人と親子の違いって、どれだけ触れ合っている時間が長いかだと思うから、撮影中も意識しましたね。
――確かに劇中でもずっと触れ合っている姿が印象的でした。
石原 触れているとどんどん愛おしさが増していくのを実感しました。
稲垣 お布団の中で2人でパジャマ姿で遊ぶシーンも楽しかった。
石原 そうそう。あの時のハート柄のお揃いのパジャマは映画のために作ってもらったものなんです。あのシーンは梨花とみぃたんの象徴的なシーンになったと思います。
稲垣 パジャマもかわいかったけど、フェンシーだっけ?
石原 フェンディね。惜しい(笑)。クランクインの時の衣装だったよね。あれ、本当に似合っていてかわいかった。
――梨花が出会ってすぐのみぃたんに選んであげたワンピースですね。
稲垣 雨の日に着た衣装も好きでした。シーンごとにいっぱいお洋服を着たんですけど、世の中にこんなにいっぱい種類があるんだって思いました。
――着せ替え人形のようにコロコロと衣装を替えるお2人のファッションが見どころですが、特に梨花は、まるで衣装のような華やかな洋服を普段着にしてしまう人。キャラクターの独特なパーソナリティーがよく現れていました。
石原 彼女はみぃたんへ異常なほどの愛情を注ぐ人なので、一度のめり込むと周りが見えなくなってしまうのは、洋服に対しても同じだと思うんです。ある種の依存症のような感覚だったと思います。
これまで演じた作品と被らないテイストの衣装にしたかったので、初めましてのスタイリストさんにお願いしました。あまりバリエーションを持たせすぎるとキャラクターがぶれるので、どの程度の範囲で洋服の幅を持たせるかは相談しました。
後半で帽子を被るシーンがあるんですけど、最後までどんなものにするか決めきれなくて。スタイリストさんが用意してくれた帽子の中で一番大きなものを監督が「それがいいです」っておっしゃって。ギャグみたいに大きな帽子なので、注目していただけたら(笑)。
2021.10.26(火)
文=松山 梢
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=中村未幸(石原さん)
スタイリング=宮澤敬子(WHITNEY) (石原さん)