小雨がポツポツ降る日に毛布に包まって観たくなる
『真夜中の虹』
「淡々と、でもテンポよく、オフビートで上質な笑いがある映画で、人生捨てたもんじゃないと静かに思える映画です。セリフ量も多くないし、表情も変えないのだが、感情はよくわかる。むしろ排除されているものが多いので、表現がシンプルに露わになる。そして人生にはユーモアが大切なんだ、とこの映画そのものが教えてくれる。
ラストシーンの新しい家族3人で小舟を漕ぐシーンでは『オーバー・ザ・レインボー』の曲がかかり希望に満ち溢れているように思えるが、目的が目的なだけに困難が待ち受けているのがわかるぶん切なくなる。映画史に残るラストシーンである。印象的なシーンが雨だからか、小雨がポツポツ降る日に毛布に包まって観たくなります」(瀧川鯉八さん)
アキ・カウリスマキ監督のそっと優しい眼差しと、独特のブラック・ユーモアが随所で味わえるロード・ムービー。ハードボイルドなタッチで、行き場のない男女のやるせない放浪の旅を描く。モスクワ映画祭最優秀男優賞。国際映画批評家連盟賞。
●あらすじ●
舞台はフィンランドの北の果て、ラップランド。炭鉱が閉山したために職を失ってしまった青年に白いキャデラックを託し、父が自殺してしまう。青年は自由に憧れ、一路南へ向かう。しかし行く先々で、金、運までも奪い去られ、思いあまってキャデラックを売ってしまうが……。
『真夜中の虹』
監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ
出演:トゥロ・パヤラ、スサンナ・ハービスト、マッティ・ペロンパー、E・ヒルカモほか
1988年/フィンランド/約173分
DVD廃盤
ハチャメチャだけどちょっぴり感動的な場面も
『ライフ・アクアティック』
「独特なテンポと、美意識に溢れた画面設計が見どころ。何もかもがうまく行かないと感じている時に見返したくなります」(辻川幸一郎さん)
新世代監督のホープ、ウェス・アンダーソンによる海洋探検コメディ。ビル・マーレイ扮するやりたい放題の海洋冒険家と一癖もふた癖もある乗組員たちの交流を小気味よく描く。
デヴィッド・ボウイの名曲のポルトガル語カバーや、ゾンビーズ、ストゥージズなど、優雅で心地よいラウンジ音楽も楽しめる。
●あらすじ●
海洋ドキュメンタリー監督のスティ-ヴ・ズィスーは、落ち目の海洋冒険家。資金獲得と自身の名声を取り戻すため、幻のジャガーザメを撮影する航海に出ることを決める。そこに突然名乗り出てきた昔の恋人の息子や、取材に押しかけた女性記者も同乗することになり……。
『ライフ・アクアティック』
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラムほか
2004年/アメリカ/約118分
© 2021 Buena Vista Home Entertainment, Inc.
DVD 1,572円(税込)/デジタル配信中
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
消していくうちに蘇る美しい愛の思い出の数々
『エターナル・サンシャイン』
「僕にとっての映画の初期体験。チャーリー・カウフマンの巧妙な脚本に加えて、映像の面白さ、音楽の豊かさ。仕事に行き詰まったり、考えが凝り固まってきたりした時によく観ています。『映画って、もっと自由でいいんだよ』と教えてくれる一作です」(藤井道人さん)
『マルコヴィッチの穴』の脚本家、チャーリー・カウフマンによるユニークな脚本をミシェル・ゴンドリー監督が独特の映像センスで映画化。記憶消去という突飛な設定のもと、ステキな恋の思い出を切なく彩る新感覚のラブストーリー。この作品ではアカデミー脚本賞を受賞している。
●あらすじ●
恋人とひどいケンカ別れをした男のもとに届いた一通の手紙。そこには、元カノが彼の記憶だけを消去する施術を受けたことが記されていた。自分も彼女の記憶を消そうと同じ施術を受ける。だが、彼女を忘れたくないと深層意識は施術に反抗、自分の脳内の彼女の記憶を守ろうとする。
『エターナル・サンシャイン』
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルステン・ダンスト、マーク・ラファロ、イライジャ・ウッドほか
2004年/アメリカ/107分
© 2004 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.
Blu-ray 2,075円 (税込) DVD 1,572円 (税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
2021.10.13(水)
文=大嶋律子(Giraffe)