「本当は幼稚園の先生になりたかったんです」(黒木)

――おふたりのお芝居への取り組み方のお話、非常に面白いです。柄本さんはもともと映画監督志望で「アクターズ・ショート・フィルム」プロジェクトなどで監督作品も発表されていますが、俳優に軸足を置こうと、ご自身で決めたタイミングなどはあったのでしょうか。

柄本 結婚したとき(2012年)から、漠然と「俳優という職種でいくだろうな」とは思っていましたね。それまでは、落語家になりたいな、寿司職人になりたいなとか色々と思っていましたし、熱中できるものが見つかればそれでいいとも考えていたのですが、幸か不幸か結婚するまでこの仕事を続けてきて、「これは一生続けていくだろうな」という感覚になりましたね。

 もちろん「長編映画を撮りたい」という夢は持ち続けていますが、いわゆる「映画監督」というものではなく、「役者が監督をする」という感じになる気はします。つまり、役者業はずっと続けていくと思いますね。

――黒木さんは高校から演劇活動を続け、大学では映画学科に進学。俳優の道をまっしぐらに進んできたのかな、とご経歴を拝見して感じました。

黒木 ラッキーだったんですよね。大学在学中に大好きな野田秀樹さんのワークショップに参加して、舞台にも出演させていただきました。

 もともと勉強をしたくなくて(笑)、やりたいことはお芝居しかなかったので、演劇が盛んな高校に進学しました。大学進学のときもやっぱり勉強をしたくなくて。

 昔からお芝居は大好きでしたが、本当は幼稚園の先生になりたかったんです。

柄本 えっ! そうだったんだ。

黒木 はい。ただ、母から「大学は楽しめるところだから絶対に行って、たくさん経験しなさい」と言われたこともあって、お芝居ができる場所を選んだんです。自分がプロになれるとは思っていなかったので、本当にラッキーだったなといつも思っています。

――なるほど……。プロを目指して一直線だったのかと思っていました。

黒木 舞台は高校の演劇部や小劇団の作品に出たことがあったので、まだ少しは想像できたのですが、映画は、完全に「観る側」だと思っていたので、自分には遠い存在だったんですよね。

 まさか映画にたくさん出させていただく側になるとは考えもしなかったので、いまでもちょっとこそばゆいです。

2021.09.09(木)
文=SYO
写真=榎本麻美
スタイリスト=申谷弘美(黒木) 、林道雄(柄本)
ヘアメイク=新井克英(黒木)、星野加奈子(柄本)