素っ裸でいられることが武器。そこから“役”を装備していく

 俳優としての武器は、武器がないこと。いわゆる素っ裸の状態でいられることが強みで、新しい役にチャレンジするたびに、どれだけ多くの装備を身につけて現場に行くことができるか、その過程を楽しんでいる。

「凝り性なんでしょうね。昔から興味があることをとことん調べたりして、自分のものにする作業が好きだったんです。その一途さみたいなものは、この仕事に役立っている気がします」

 ステイホーム期間をきっかけに、苦手だった読書からインプットする時間も多くなった。

「最近では本屋でなんとなく手に取った『推し、燃ゆ』の著者の宇佐見りんさんが、僕と同じ沼津出身だったことに刺激を受けました。作品自体もおもしろかったし、自分も頑張らなきゃなって思いましたね。あとは独学で始めたフィルムカメラも好き。

 路上に椅子とかソファが捨てられたりしていると、どうしても撮りたくなってしまうんです。一度役割を終えたものに写真を通して命を吹き込む感じが楽しくて。明るいものよりも、人が目を向けない暗さのある対象が好き。マイナー気質なんです(笑)。これから挑戦してみたいことはソロキャンプですね。

 自然の中に飛び込んで、ひとりでどこまでできるか試してみたいです。大好きなコーヒーを淹れたり料理をしたり、瞑想をするのもよさそう。何より、自然と一体化してぼーっと過ごしたら、自分がどんな気持ちになるのかを知りたいです」

 平凡な人生を送るよりも、「五感をくすぐられるような刺激的な日常を送りたい」と熱っぽく語るその好奇心は、どんな瞬間、どんな感情も必ず役立つ時が来る。常に芝居と繋がっているのだ。

 大自然の中に身を置いたとしても、磯村さんはきっと熱心に何かを演じている気がしてならない。

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磯村勇斗(いそむら はやと)

1992年9月11日生まれ、静岡県出身。主な出演作は連続テレビ小説「ひよっこ」、ドラマ「今日から俺は!!」、「きのう何食べた?」など。現在、大河ドラマ「青天を衝け」に出演。映画『東京リベンジャーズ』、『劇場版 きのう何食べた?』が年内公開。

ドラマ「演じ屋」

痴漢の冤罪で仕事も婚約者も失ってしまったトモキ(磯村)は、客から依頼された役になりきる“演じ屋”のアイカ(奈緒)を雇う。
脚本・監督:野口照夫
出演:奈緒、磯村勇斗ほか
7月30日より毎週金曜23:30~WOWOWにて放送・配信スタート。
https://www.wowow.co.jp/drama/original/enjiya/

2021.07.25(日)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=Tomoki Kuwajima
Styling=Ryosuke Saito
Hair & Make-up=Tomokatsu Sato

CREA 2021年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

ちょっとだけアウトドア

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