植物に囲まれた自宅のベランダで台本を覚えたり、お昼寝したり。
充実したベランダライフを過ごす芸能界屈指の植物マニア、滝藤賢一さんに植物と暮らす魅力についてお話を伺いました。
「枯らさないように手をかけた分、愛おしさが増していく」

仕事の合間に馴染みのお店で買い集めた植物の数は約300鉢。中南米やアフリカの乾燥地帯から来た多肉植物で埋め尽くされたベランダで「気づけば一日過ごしていたことも」と話す滝藤さん。
「植物を育てる楽しみは人それぞれですが、僕が惹かれるのは断然ルックス。行きつけの洋服屋でたまたま目にしたエアプランツがとにかく格好よく、購入したのが始まりです。
華やかな美しさよりも、無骨なものや、植物らしからぬ色のシルバーやブラックリーフなど『こんなの見たことない!』というものに惹かれます。
時間を経て変化するアート作品を愛でる感覚ですね。生き物なので手間はかかるし、時間もとられる。

でもね、枯れかけてしまった植物が再起する姿を見たら、その生命力というか健気さに圧倒される。本気ではまった瞬間はそこかもしれない。
思いがけない形に生長したり、予測不可能なところも面白い。そんな変化を観察していると、仕事のことや現実的なことが頭から離れて『無』になれる。その感覚もすごく心地いい」

植物に触れることで思考より五感が研ぎすまされ、心が整う。もっとも身近な自宅のベランダで植物を愛でるのは、なんだかとても気持ちが良さそうだ。とはいえ、枯らしてしまうのでは……と苦手意識のある人も多い。
「まずは育てる植物の性質を知ること。必要なのは光と水と風。光と水は植物によりけりなので、お店の人に聞くなりネットで調べるなり情報収集を。
性質を知れば難しいことではないですよ。忘れられがちなのは風。空気の循環は重要です。空気が淀むと人間だって調子が悪くなるでしょ?

手っ取り早いのは、信頼できるお店を見つけること。選ぶ基準は、しっかり根の張った状態の良い植物を扱っていて、育て方の情報を丁寧に教えてくれるかどうか。
生き物を扱っているのに、売ったら終わりという店はダメですよね」

滝藤さんの行きつけは梅ヶ丘の商店街にあるHANACHO。
「ハーブの苗から希少な鉢植えまで初心者からマニアまで楽しめる品揃えです。お店の人も丁寧に教えてくれるので初心者の方も安心かと。

今回、僕のおすすめを難易度別で紹介していますが、結局のところ自分のインスピレーションで選ぶのが一番です。難易度が高いといわれる植物でも相性さえ良ければスクスク育ちます。
気に入った植物を枯らさぬよう大事に大事に育てると、愛おしさが増していくんです。新しい芽を発見したときには、きっと植物の魅力にどっぷりはまっているはずです」
2021.06.26(土)
Text=Mayumi Amano
Photographs=Kousuke Matsuki
Hair & make-up=Tsuguru Nasuno
CREA 2021年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。