「CREA」2021年夏号の特集は、「ちょっとだけアウトドア」。
遠くへ旅に出たり、自由な外出がままならない日々の中でも、たとえばふと見上げたビルの間で移り行く空の色や、道ばたに揺れる季節の草花、ベランダで感じる陽の光――。
ベランダで過ごす一日から、身軽なキャンプまで、アウトドア気分をちょっとだけ、お届けします。
CREA 2021年夏号
ちょっとだけアウトドア
特別定価900円
ベランダ時間が楽しくなってきた/緑の中へ茶籠を連れて/待ちきれない! 焼き立てパンを公園で/晴れた日は木陰に絨毯。ピクニックしようよ/ワンマイルファッションの正解/Watch & Do it!スケートボードを始めよう/フィン式サウナでエスケープジャーニー/ミニマルキャンプに挑戦してみた/メスティン&ホットサンドソロのミニマルグルメ/大自然のリズムに心委ねるネイチャーステイを
CREA WEBでは、「CREA」2021年夏号のコンテンツの一部を大公開します!
高橋一生が夢中になるアウトドアの魅力
登山、クライミング、自転車など、高橋一生さんがアウトドアに親しんでいることは広く知られている。この撮影をしながらも、キャンプをしに湖へ行ったときのことを語ってくれた。1日目は友人と共に、その後は車で移動し、ひとりで野山の散策を楽しんだそうだ。
ついでに言うと、最近オーダーメイドで新しく自転車をあつらえたと言い、「ダート用のマウンテンバイクなので、今はとにかく早く山道を走りたいんです」と、目を細めてニンマリ微笑む。そこまで高橋さんが夢中になるアウトドアの魅力はどこにあるのか。
そして、何を求め、何を得るために自然の中に足を踏み入れるのか。手始めにそのことを尋ねてみると、「ちょっと面倒くさい話になりますけれど……」と前置きした上で、話は思いも寄らない深みへとずんずん分け入っていった。
生きていると実感できるのは 自然の中にいるときだけ
「僕がアウトドアをする理由は、何もしない、をするため。登山をするにしても、野山を散策するにしても、その時間は他のことを考えなくてよくなるんです。それは普段、なかなかできないこと」
確かに、時間を有効に使うように刷り込まれている現代人にとって、何もしないことは至難の業。
「肉体はどうしてもタスク的に動きますから。けれど、それはとてもつまらないことだなと思っていて。そもそも“有効”って何だろう? と思うんです。もともと人間は、効率的に動ける生き物ではないですから」
生きていると実感できるのは、仕事をしているときでも、お芝居をしているときでもなく、自然の中にいるときだけ。
「人間は不器用な生き物で、これまでがんばって便利な世の中にしてきたけれど、結局のところ、便利は自分のものではないんです。それなのに、自分の能力だと勘違いしてしまっている。これはかなり恐ろしいことだと思います。今も昔も、実は人間はそんなに変わっていないですから。
唯一、僕が生きていく意義を見出せるのが、便利さを省いた場所のような気がしています。どうしても家の中にいると便利なものが周りにあるので、なるべく便利なものが何もない場所に自分を置いてしまう、ということをしたいんです」
2021.06.07(月)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=Sai
Styling=Takanori Akiyama(fashion), Kiyomi Shiraogawa(interior)
Hair & Make-up=Mai Tanaka(MARVEE)
Cooperation=PROPS NOW, SCRAP PAGES, AWABEES