叶った夢の、その先を模索しているところ

 これまでドラマや映画で演じてきたのは、心優しい料理人からツッパリ、同性愛者から殺し屋まで幅広い。最新作は、意外にもこれが連続ドラマ初主演となる「演じ屋」。

 そして今回演じるのは、ひょんなことから依頼された役になりきる“演じ屋”の世界に足を踏み入れた、ごく普通の青年。

「僕が演じるトモキは自分を痴漢の冤罪に追い込んだ犯人たちに復讐をする役なんですが、とにかく人の言うことをすぐに信じてしまう優しい男。本当にピュアな人間で、漫画に登場するような王道の主人公キャラなんです。僕がこれまで演じてきた役とは違って癖も強くない。

 よく普通の役を演じるほうが難しいと聞いていたので、そうかなと思っていたのですが、案外普通の役のほうがうまく力が抜けて自然にできました。そこにどう個性を乗せていくかは、試行錯誤でしたけどね」

 子どものころに憧れていたのは、俳優ではなくお笑い芸人。とにかく目立つことと笑わせることが好きで、ネタを披露するような子どもだった。そんな少年が俳優に興味を抱いたのは中学生のころ。夕方にテレビで放映される昔のホラー映画などに触れるうちに、映画の世界に没頭するようになり、自主映画を制作するまでになった。

「高校受験までは1位を取りたいと思って勉強もかなり頑張っていたんです。でも高校に入ってからはお芝居という明確な目標ができたので勉強する意味を見出せなくなってしまって。国語の授業でも、ひとりだけ演劇チックに感情を込めて音読したりしてました。

 そのころはとにかく、俳優になってテレビや映画に出たい、芝居をしたいということばかり考えていました。その思いが強すぎて、夢が叶った今では正直、次の明確なビジョンがなくなってしまって。この先には一体何があるんだろうって、すごく考えています。とにかく続けること、トライすることで進むべき道を見つけていくしかないと思っています」

2021.07.25(日)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=Tomoki Kuwajima
Styling=Ryosuke Saito
Hair & Make-up=Tomokatsu Sato

CREA 2021年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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ちょっとだけアウトドア

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