■『TRICK』『HERO』が“阿部寛・復活”の狼煙に

 筆者はこの後、二つのドラマが阿部さんの役者人生の転機になったのではと考えています。

 『TRICK』(2000年/テレビ朝日系)と『HERO』(2001年/フジテレビ系)です。

 『TRICK』では仲間由紀恵さんとダブル主演。23時台と遅めの放送時間で開始当初は注目度が低かった作品でしたが、阿部さんらの振り切ったクセになるコメディ演技がウケてスマッシュヒット。

 劇中では阿部さんのモデル時代の写真が自虐的に多用されるなどし、阿部さん自身の好感度も上がっていったように感じます。連続ドラマは3シリーズ、劇場版は4作も制作され、2014年まで続く大人気シリーズに化けていきました。

 『HERO』は木村拓哉さんが型破りな検事役を演じ、全話平均視聴率34.3%を叩き出した伝説のドラマ。

 阿部さんは木村さんの仲間の検事役でバイプレイヤーとしての起用でしたが、フジテレビの月9ドラマ史上最高の視聴率を記録しているモンスター級の作品にレギュラー出演したことで、広く世間に“阿部寛・復活”を印象付けられたのではないでしょうか。

 『TRICK』、『HERO』で完全復活を果たした阿部さんは、『最後の弁護人』(2003年/日本テレビ系)、『アットホーム・ダッド』(2004年/フジテレビ系)といった連続ドラマの主演を経て、2005年の『ドラゴン桜』に辿り着くわけです。

 その後も『結婚できない男』(2006年/フジテレビ系)や、『下町ロケット』(2015年・2018年/TBS系)といった主演ドラマをヒットに導いていきました。

 恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー視点で語らせていただくと、阿部さんは同性から見ても非常にかっこいいと思える俳優です。

 それは顔立ちが整っているとか背が高いといった表面的なファクターではなく、低迷期を乗り越えて“今”があるという、その復活劇に胸が熱くなるからだと思います。そう、シンプルに生き様がかっこいい。

 『あの人は今!?』に取り上げられるほど落ちぶれていた俳優が、主演俳優としてばんばんヒットを飛ばしている――そんな不死鳥の如きエピソード、阿部さんしか持っていないんじゃないでしょうか?

 現在、『ドラゴン桜』第2シリーズが放送されているTBSの日曜21時枠「日曜劇場」は、『下町ロケット』シリーズや『半沢直樹』シリーズなど熱い男たちの戦いを描くのが十八番。ですから阿部さんの半生を「日曜劇場」で作品にしても面白いんじゃないかと思うほど、ドラマティックな俳優人生ですよね。

堺屋大地(さかいや だいち)

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『文春オンライン』(弊社)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。
公式Twitter @SakaiyaDaichi

2021.05.30(日)
文=堺屋大地