「飽きっぽい性格なんですけど、人生の中で唯一飽きずに続いてるのが音楽だけなんですよね」
――佐藤さんは、SNSを見ていても音楽以外にもいろいろなことに好奇心を持たれる方という印象がありますが、その性格は楽曲に出ていると思いますか?
すごく出てると思います。多分私、飽きっぽい性格なんですけど、人生の中で唯一飽きずに続いてるのが音楽だけなんですよね。
最近気づいたのは、飽きっぽいからいろんなサウンドを試したくなっちゃうんだなと。毎回違うエッセンスを入れたくなって、大きな進化や新しい発見をいつも求めているんですよね。それもあってずっと楽しく音楽と向き合っていられるのかなって。
――最近のトピックとして、映画『花束みたいな恋をした』で主人公の麦と絹がカラオケできのこ帝国の「クロノスタシス」を歌ったことで、きのこ帝国が再び注目を浴びていますが、映画はご覧になっていましたよね?
はい。試写会が始まるくらいのタイミングで使われていることを知ったんですけど。
私もバンドメンバーも割とひねくれてるので、「今か」って思ったところはありますね(笑)。あの曲をリリースした時は自信満々でめちゃくちゃ売れると思ってたので。そこそこ人気のある曲にはなってくれましたけど、バンドが休止した後じゃなくて、当時もうちょっと盛り上がってくれれば良かったのにって。バンドってほんと生き物だなと思いました。
でも、あのシーンも主人公ふたりの大学時代の話なので、史実に乗った感じのお得感はありますよね(笑)。嬉しかったですけど、自分の家族が映画に出てるのを観るような感じで、ちょっと照れ臭かったです。
昔、菅田(将暉)くんと飲み屋でばったり会ったことがあって。アコギがたまたまあったので、「ちょっと弾いてよ」って話になって、そこにいたみんなと一緒に「クロノスタシス」を歌ったことがあるんです。
だからあのシーンを観て、「あ、菅田くんまた歌ってる」っていう懐かしい気持ちにもなりました。菅田くんもその時、「すごく好きな曲」って言ってくれていたので、個人的には割とリアルなシーンでした(笑)。
――いい音楽を作り続けていると、こういうことが起きるんだなと思いました。
あ、それは思いました。ソロの曲でも時間差で誰かがラジオで褒めてくれたり。
「クロノスタシス」のこともそうですけど、後々「楽曲がいいよね」って評価されるのは、貯金じゃないですけど、昔からコツコツいいと思うものを作り続けてきたからこそ起きる現象なのかなと思って。そこが一番嬉しいところではありますね。
2021.03.25(木)
文=小松香里
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=入江陽子(TRON)
ヘアメイク=SAKURA(まきうらオフィス)