「毎回ゼロから何かをがむしゃらに生み出していく感じはずっと変わらないかもしれない」

――制作の手法や嗜好の変化はあると思うんですが、曲への向き合い方について変化はありますか?

 1曲作り終わるとリセットされて、毎回ゼロから何かをがむしゃらに生み出していく感じはずっと変わらないかもしれないです。それで新しいことを引っ張ってくるんですけど。

 それこそ「クロノスタシス」はヒップホップとかR&Bみたいな曲が作りたいと思って作ったんですね。それをメンバーに伝えたら、当時はシューゲイザーとかオルタナっぽいロックをメインでやってたので、「そういう曲、俺らバックビートで演奏できるかな?」って話になって。でも「かっこよくなると思うからやってみようよ」って言ってゴリ押しして(笑)。

 結果、今になって新しく好きになってくれる人もいたので、やっぱり新しい挑戦っていうのはやって損はないなって思いますね。

 きのこの『フェイクワールドワンダーランド』に入ってる「You outside my window」っていう曲は当時いいなと思っていた四つ打ちっぽい曲を意識したものですし。だから、今とやってること変わってないですよね(笑)。

 ソロになって「かなり雰囲気が変わった」って言われることもあるんですけど、きのこの初期から聞いてる人にとっては今に始まった話じゃないんじゃないですかね(笑)。アルバムや曲によって毎回雰囲気が全然違うから。ソロは演奏メンバーも変わるので、より変わったと感じるのかもしれないですよね。

――ソロになってからは、より活動の範囲も広がって。提供曲も劇伴もやられてますよね。

 そうですね。KAT-TUNの亀梨(和也)さんのソロ曲を提供させてもらったり。他の人のディレクションをするのはめちゃめちゃ楽しいなと思いました。

 劇伴は学生時代からいつかやりたいと思ってたのですごく楽しかったですけど、大変な作業でしたね。

――映画『CAST:(キャスト)』は劇伴だけでなく出演もされていました

 音楽はいろいろやってみたいんですけど、それ以外のことには仕事としてあまり興味が湧かなくて。

 でもオファーをいただいたタイミングがソロになってどう活動していくかを考えていた時期で、その経験が例えばMVとかに活きるかもしれないからやってみてもいいんじゃない? ってスタッフの方に言っていただいて。すごく愛情のあるオファーでもあったので、迷わずやらせてもらいました。

 もちろん迷惑をかけないように真剣には取り組んだんですが、その業種のプロフェッショナルの人はいっぱいいるし、やっぱり自分は一番好きな音楽をバカみたいにやってるほうが性に合ってるなと思いました(笑)。自分以外の人間になるのは向いてないなって。やっぱり自分の言葉を歌うから、それに反応してもらえると感動するんだなと。

2021.03.25(木)
文=小松香里
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=入江陽子(TRON)
ヘアメイク=SAKURA(まきうらオフィス)