●数々の舞台で学んだ引き算の作業

――続いて、14年の特撮ドラマ「牙狼〈GARO〉-魔戒ノ花-」で主人公と共闘する魔戒騎士・クロウ役を演じられました。

 「牙狼」に関しても高校生の自分がレギュラーに選んでいただけるなんて信じられないことでした。

 それまでドラマは自宅のテレビで親と一緒に見る程度の興味しかなかったんですが、舞台とは違う映像ならではの楽しさや、特撮やアクションの大変さ、現場の熱を感じることができました。有り難い経験をさせてもらいました。

――その後は、15年に初座長を務められた「ハムレット」などのストレートプレイや、一人舞台などもされています。

 今となっては舞台と映像の垣根は感じていませんが、同じ舞台でもマイクで声を拾ってくれる大劇場での「テニミュ」と小劇場での「ハムレット」では、声の出し方が変わってくるんです。キャラクターに寄せた芝居をしていると、ストレートプレイのときに芝居の組み立て方が分からなくなることもありました。

 いろんなタイプの舞台に立たせてもらうことでたくさんのことを学びました。

●芝居の楽しさを思い出させてくれた演出家との出会い

――そんななか、ご自身の転機となった作品は?

 この仕事を始めたときに持った「芝居の楽しさ」を思い出させてくれた「ハムレット」です。

 そのときの演出家・笹部博司さんは動きや見た目より、心重視で演出してくださったことも大きいです。

 笹部さんとはその後も音楽劇「星の王子さま」や一人芝居「二十歳の暗殺者」でもご一緒したので、笹部さんとの出会いも転機といえるかもしれません。

水石亜飛夢(みずいし・あとむ)

1996年1月1日生まれ。神奈川県出身。12年、ミュージカル「テニスの王子様 2ndシーズン」で俳優デビュー。その後、舞台・ドラマ・映画などで活躍。20年、ドラマ「魔進戦隊キラメイジャー」でキラメイブルー/押切時雨を演じ、お茶の間のヒーローとなる。現在、映画『哀愁しんでれら』が公開中。

映画『国民の選択』

20XX年、国会で原発を禁止する憲法案が発議され、原発の是非を問う国民投票の実施が決定。町議会議員・高橋明(妹尾青洸)は家族に賛成に投票するように指示。原発警備員の息子・敦(水石亜飛夢)も生活費のため、原発には賛成であったが、敦の婚約者・直子(泉はる)との間に新たな命を授かることが分かり、原発について疑問を抱くようになる。
https://www.kokumin-movie.com/
3月5日(金)より、アップリンク渋谷ほかにて公開
©2021映画「国民の選択」製作委員会

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2021.02.26(金)
文=くれい 響
写真=末永裕樹