子供の頃から感じてた幻想的な山形が映ってた気がした
――完成した映画を観終わった時、まず、どんなことを思いました?
山形が、北欧映画みたいな感じに見えた。
日本人が思う山形のイメージってね、しょっぱい漬け物とか、寒いとか、訛ってるとか、そういう東北の感じでしょ。
でも、俺が子供の頃から感じてた山形って、すごい幻想的で……『シザーハンズ』って映画あるでしょ。あれさ、ジョニー・デップが氷を削るじゃん、ハサミで。あのイメージと近いんですよ。
高校生の頃とか、ひとりで夜、家を飛び出してさ、雪を踏みながら、ニルヴァーナとか聴いてる。電灯が立ってて、その光に照らされて、雪がキラキラ……ああいうのが映ってた気がした。
(アキ・)カウリスマキじゃないけど、フィンランドとか、スウェーデンとかさ、ああいう感じで、山形が、ちょっとオシャレに見えた。新鮮でした。
だから、いつか、90分とか120分で、山形だけの映画、誰か撮ってくんねえかな、と思って。
――そしたら出る?
出る! おもしろいと思うよ。ガス・ヴァン・サントみたいなさ、ああいうノリで山形を撮ってほしいよね。淡々とね。おもしろいと思うんだよね。
――私、これまで何度も峯田さんにインタビューしてきたんですが、ミュージシャン・峯田和伸にしかインタビューしたことがないんですね。音楽ライターなので。
うん。
――いい機会なので、俳優・峯田和伸としての質問を──。
俳優じゃないよ、べつに!
――最初に俳優・峯田和伸を観たのは、映画『アイデン&ティティ』(2003年)なんですけど、「普段の峯田そのままじゃん!」と、びっくりしたのをよく憶えているんですね。
うん。まあ、あの映画はああいう設定だからね、バンドマンっていう。だから地でいけたっていうかね。
――俳優としての初期は、そうやって地の延長で芝居をしていたけど、どこかのタイミングで変わった、みたいなことはない?
わかんない、自分では。
2021.01.15(金)
文=兵庫慎司
撮影=佐藤 亘