大野 智の孤高の演技に「魔王堕ち」する人が続出!

 大野 智のテレビドラマ主演デビュー作「魔王」(08年・TBS系列)の衝撃はすごかったです。当時のほほんとしたキャラクターで、それまで演技でのイメージがあまりなかった大野くん。本作はもともと演技に定評のある生田斗真とW主演ということで、ある程度お膳立てされたキャスティングなのではないかと最初はたかをくくっていました。

 しかし! 観始めてみたら、初めての連ドラとは思えないほどの魅力を放っていました。「魔王」は俳優・大野 智の演技力を多くの人が知るきっかけとなった作品なのではないでしょうか。この役を大野くんにオファーした関係者の先見の明に感謝したいです。

 演じたのは、表面上は弱きを助け強きを挫く、誰に対しても優しい“天使の弁護士”の成瀬領。しかし一方では11年前に弟を殺害され、犯人たちへの復讐に人生のすべてをかける“魔王”としての冷徹な一面を持っているという役です。

 まずギャップに驚かされます。普段知っている大野くんではなく、完全に成瀬 領としてドラマの中で存在しているのです……。そこにいるのは感情を押し殺して復讐の鬼となる孤独な男の姿でした。セリフがなくとも、その目、喉仏など色々な部分から感情が溢れているのが画面越しでもわかって度肝を抜かれました。

 撮影時はひとりでいることにこだわり、孤独を極めるという役づくりをしたと後に話しています。「すべての撮影を終えた日の朝4時ごろ、帰ってきた自分の部屋で、自然と涙が出た」という後日エピソードまで、完璧です。

 大野くんといえば音楽番組「うたばん」で、MCの中居正広に暴言を吐く“下剋上コント”が恒例でした。「魔王」撮影合間の「うたばん」では、ドラマ収録で入り時間が遅れたことに対して怒り、中居くんが「タイトル変えれば?『大魔王』に」といじる回も。仁義なき戦いのBGMが流れたらケンカに突入し、他のメンバーが制止するというのがお決まりの流れ。孤独な役づくりの合間にもちゃんとアイドルとして明るく仕事をこなしているのだからすごいです。

 「怪物くん」(10年、日本テレビ系列)をやると聞いた時は、あ〜、そっちに行かないで……(香取慎吾の「こち亀」のようにそちらはつらい世界だよ……)と最初は思ったものの、蓋を開けたら大野くんの卓越した演技力がドラマ全体を牽引していました。

 ダンスで鍛えた身体能力が、演じることにも応用できているのでしょう。もともと持っている芸術センスと努力により、様々な芸事に長けた頑丈な基盤が出来上がっているんですよね。テレビでしばらくその姿を観られなくなるのは残念ですが、名作ドラマを観ながらいつか戻ってきてくれるその日を待ちましょう。

2021.01.02(土)
文=綿貫大介