二宮和也の繊細で人間味あふれる演技に涙

 華やかなアイドルの世界に身を置きながら、素朴さを失わないでいられるのはなんでだろう。蜷川幸雄監督映画『青の炎』主演、クリント・イーストウッド監督のハリウッド映画『硫黄島からの手紙』に出演、『母と暮せば』では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞と、とにかく演技の評価が高い二宮和也。

 アイドルとしてトップの位置にいるにもかかわらず、演技をする際は目立った花を背負うことなく平凡ないち人間の人生を演じきっています。同じジャニーズでいうと、風間俊介も同ポジション。風間といえば「3年B組金八先生」の第5シリーズ(99年・TBS系列)での兼末健次郎役がピカイチでしたが、そのオーディションにはニノも参加していたらしいです。2人は同じ生年月日と血液型。似た者同士、良きライバルと言えますね。

 二宮和也ドラマで推したいのが「優しい時間」(05年・フジテレビ系列)。寺尾 聰とともに物語の主人公を演じていた作品です。脚本はドラマ史におけるレジェンド的存在・倉本 聰。完全にアイドルドラマではないことが明確な本作でニノが演じるのは、寡黙で純粋でナイーブな青年・拓郎。非行に走っていた時期に、交通事故で同乗していた母・めぐみ(大竹しのぶ)を死亡させてしまった過去を持ち、家族との重い葛藤を抱えた複雑な役どころでした。

 圧巻なのは、静と動の演技。善人の役も悪人の役も違和感がないんですよね。ドラマでは断絶してしまった父子の心の雪解けが、北海道の雄大な大自然を背景に描かれています。

 本作で倉本 聰に認められ、その後同じく倉本脚本の「背景、父上様」(07年、フジテレビ系列)で単独主演し、料亭の料理人見習いとして働く青年を演じていました。俳優が脚本と違うセリフを言うことを潔しとしない倉本先生が、ニノに対しては「自由にやってくれ。ただし俺の本以上に変えてくれ」と言うそうです。それはニノが常にセリフとその演技で脚本以上のものを見せてくれるから。きっと信頼関係が出来上がっているのでしょう。

 そういえば倉本脚本「やすらぎの刻〜道」(19年・テレビ朝日系列)には戦友の風間俊介が坊主頭で出演していました。ニノも過去3作で実際に坊主になっていますし、やはりニノとかざぽんの2人には運命めいたものを感じます。

2021.01.02(土)
文=綿貫大介