留学生活を通して知る 自分の個性

 日本への外国人留学生は、いまや31万人を突破。日本のどこに魅力を感じてきてくれるのかわからないが、母国や両親が強いる価値観と折り合えず、突破口を求めてやって来た留学生もいるだろう。


留学生小説 #01『星月夜』

 柳とユルトゥズが交互に語り手を務め、故郷の事情や両親との関係が明かされつつ進む。容易にはわかり合えないと感じながら、それでも新たな関係のために踏み出す彼女たち。ユルトゥズが受けた理不尽な仕打ちは、これも日本の現実かと思うと切ない。

『星月夜』

李 琴峰 集英社 1,500円

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外国人留学生たちが味わう 日本での暮らしのリアル

 『星月夜』では、台湾出身の日本語教師・柳凝月と、教え子でもある新疆ウイグル自治区出身の留学生・ユルトゥズこと玉麗吐孜が日本で出会い、惹かれ合う。

 日本での生活では、やはり言語が壁になる。日本語教育について論文まで書くほどのスキルを持つ柳でさえ、生活費を稼ぐのは楽ではない。これから大学院入試に挑戦するようなユルトゥズはなおさらだ。バイト先のコンビニでも、道を聞いた交番でも、言葉でうまく危機状態を回避できない。

 そんなふたりには漢語という共通言語があるが、それでも打ち明けられない胸の内がある。セクシュアルマイノリティである自分を受け入れている柳と、受け入れきれないユルトゥズ。だが、ひとりの日本人女性によってその関係性に変化が……。

2020.12.29(火)
文=三浦天紗子

CREA 2021年1月号
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この記事の掲載号

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思いもかけない日々となった2020年。いつもと違う毎日のなかで新しい習慣ともなんとか付き合ったり、戸惑うこともあったと思います。思い通りに会えない日々が続いても、贈りものという形で気持ちを届けたい――。誰もが頑張った一年と、新しい明日に贈る、感謝とご褒美、ときどきエール。いろいろな想いをギフトにして届けます。