白壁土蔵群が美しい倉吉の街並みを散策

 白壁土蔵群を散策中、ランチに立ち寄りたいのが、「土蔵(どぞう)そば」。大正時代建築の蔵を改装したこの店には、版画家の棟方志功も訪れたという。

 手打ちの二八蕎麦はつるっとのど越しがよく、福光焼がこの店のために作ったという二段重ねの割子が、さらに味わい深さを増す。

 料理がおいしいと、それを盛る器も欲しくなってしまうもの。土蔵そばで使われている割子は、近くの「クラフトショップ COCOROSTORE」で入手できる可能性が大。

 店内には、鳥取を中心にした工芸品や民芸品が並ぶ。ひときわ存在感を放つのは、今では希少となった手打ち鍛造の包丁だ。

 このほか、染織品のバッグ、レザーアクセサリー、蜂蜜や藻塩などの食材も。何でもありに見えて、店内にあるものはすべて、「民藝」「暮らし」というキーワードで結ばれている。

 家具職人をめざし、長野県・松本の民藝家具の工房で働いていた田中信宏さんが、仕事を通して鳥取民藝の素晴らしさに目覚め、Uターンして開いたのがこのお店。職人に会い、自身がほれ込んだものばかりを並べている。

 ここで出会うのは、旅のお土産というよりも、日々の暮らしで使いたくなる実用品。器をどれにしようか迷えば、焼き方のこと、色のこと、素材のこと、商品の背景を、田中さんが分かりやすく教えてくれる。

 ほど近くにある「saon」は、ガラス工芸作家の大家具子(ともこ)さん、ギタリストの中村好伸さん夫妻が営む音楽と生活雑貨のセレクトショップ。川に架かる石橋を渡り白壁土蔵の建物に入ると、心地よいBGMと透明感ある空気に包まれる。

 昔は銀行と宿舎だったという古い土蔵を改装した趣ある建物は、奥行きのある造り。手前側のスペースには、衣類やアクセサリー、生活用品など、全国の作家仲間が手がけるアイテムが並ぶ。

 「同じ思いでモノ作りをしている人たちのものです。どれも大切に作られているんですよ」と大家さん。

 奥に進むと、窓から差し込む自然光を浴びてキラキラと輝く、大家さん作のガラス細工が。日の当たり方によって刻一刻と光り方が変わる不思議さに、引き込まれそう。ひとつひとつ表情が微妙に違うのも、手作りならではの味わいだ。

COCOROSTORE

所在地 鳥取県倉吉市魚町2516
電話番号 0858-22-3526
営業時間 10:00~18:00
定休日 火・水曜(営業時間や定休日に変更あり。HPで確認を)
http://cocorostore.jugem.jp


saon

所在地 鳥取県倉吉市魚町2521-1F
電話番号 0858-38-9023
営業時間 11:00~18:00
定休日 火曜
http://www.saon.jp/

2020.11.24(火)
文=芹澤和美
撮影=山田真実