手仕事のこだわりは 山陰最古のワイナリーにも
![戦時中に創業した「北条ワイン醸造所」。山陰最古のワイナリーの老舗は、少数精鋭の実力派。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/8/-/img_b8c0386ce77a5a638c8989070fddd58e153506.jpg)
市から車で15分ほどの「北条ワイン醸造所」は、ルーツを戦時中に遡る老舗。もとは軍事用の電波探知機のパーツとなる酒石酸(ワインを作る過程で生まれるもの)の工場として稼働していた経歴を持つ、ユニークなワイナリーだ。
戦後、醸造の技術を生かして本格的なワイン造りを始めて以来、地元で長く愛されている。
![隣の畑で長芋が育つのどかな風景の中で、すくすくと実っているのは、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、マスカットベリーAなど。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/e/-/img_9eba53b6a8a35c2510928ec0d60370c0189815.jpg)
すぐ近くには、砂丘栽培のブドウ畑が。水はけがよい土壌があることに加え、砂地は照り返しが強く、昼は気温が上昇するが夜は日本海から冷風が吹き気温差を生む。この独特の環境が上質なワイン造りに適したブドウを育てているという。
砂丘と聞くと、砂漠のような乾いたイメージがあるけれど、実は農作物の栽培がさかんで、なかでもブドウは江戸時代から作られているのだそう。
![豊かな土壌が鳥取ならではのワインを生む。まさに、北条ワインは砂丘の恵みだ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/-/img_dc02ad6795d009a6b13419d56415af58161120.jpg)
土に触れてみると、まさに砂のようにサラサラで、ここに栄養分があるのが不思議なほど。でも、この畑でブドウ栽培が始まって約100年が経ち、土壌はどんどん良くなっているのだそう。
主力商品の「スタンダード」は、しっかりと熟成した辛口。味噌や醤油を使った和食に合う赤や、煮物に合うロゼ、鍋物に合わせたい白、いずれも720mlで1,300円(税込)、根強い人気のヴィンテージも2,600円(税込)と、国産ワインにしてはとてもリーズナブルだ。
![「スタンダード」(中央)は鳥取県の地図ラベルの正面から瓶をかざすと、下部に砂丘が透けて見えるデザイン。ちなみに、白は昼の砂丘、ロゼは夕方の砂丘、赤ワインは夜の砂丘をイメージしているそう。「砂丘」(右)は赤、白ともに定番の人気。「トットリ SKY」はシャンパンと同じ瓶内2次発酵、ANAのファーストクラスで提供酒として採用されたことがある逸品。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/-/img_ec697fc5ed6f3fe487366df00d8470f493705.jpg)
心を掴むのは、他にはない唯一無二のワイン。日本では貴重な酒精強化ワインの「アンバー」は、ポルトガルのマディラワインを思わせる熟成香がありながら、里芋の煮物のような家庭料理にも合う味だ。
多くの人が楽しめるよう、コストを抑えて少数精鋭、そして栽培から醸造まで一貫して手作業で行われるこのワイナリーに見学施設はないが、オンラインでは買えない直売所限定ワイン「リミテッド・ブレンド」を狙って、はるばる訪れるリピーターもいる。
旅を終えたら、見つけた器に料理をよそい、砂丘で育ったブドウのワインとともに味わおう。鳥取の手仕事との出会いは、旅の余韻にも浸らせてくれそうだ。
北条ワイン醸造所
所在地 鳥取県東伯郡北栄町松神608
電話番号 0858-36-2015
営業時間 8:00~17:00
定休日 土・日曜(醸造所の前の自動販売機にはワインもあり)
http://www.hojyowine.jp
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
2020.11.24(火)
文=芹澤和美
撮影=山田真実