女芸人だけで普通にお笑い番組がしたい

――話を『イルカも泳ぐわい。』に戻しますが、連載が始まったばかりの頃、女芸人ならではの文章が話題になりました。今、改めてお読みになってどう思いますか?

コントで迷う事がある。医者を演じることはつまり、女医を演じることになってしまう。意味合いが大きく変わってくるのだが、女が演じるのだから当然だ。そんな当たり前を、うまく咀嚼できない。私はコントで、聴診器を使って遊びたかっただけだ。私はコントで、友達の足を洗いたいだけなのだ。(「こいつの足くさいから洗ってんねんー!」より)

 これを書いた当時(2018年)と比べると、今の女芸人界は様変わりしている部分もあるし、自分の気持ちにも変化はあります。今、正直に話すなら、「こういう私みたいなことを言う女芸人自体が増えたから、もう私は言わんでいいかな」っていうターンかもですね(笑)。

――同期のヒコロヒーさんとやっているYouTubeラジオ「レイコーラジオ」の中で、「最近は女芸人全員が、自分がどんなスタンスで芸人をやっているのかを表明しないといけない空気になっている」という趣旨の発言をされていましたが、それについてはどうですか?

 今はほんまに自己紹介くらいの感じで、「どうもAマッソ加納です。芸歴何年目で、こういうスタンスで女芸人やってます」って言わないといけないくらいの感じになってるのは確かですね。でも、女芸人何人かでご飯行くと、みんな「もうスタンス大会ええわ!」って言ってます(笑)。

 今後は、普通に女芸人だけで企画をやったり、お笑い番組がしたいです。女芸人にもいろいろ思うことがあるという認知は十分されたと思うので、わざわざ何かに噛みつかなきゃいけないような流れじゃなくて、その次がやりたいですね。実現したら、それはむちゃくちゃでかい一歩だと思ってます。

2020.11.13(金)
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘