「女芸人No.1決定戦 THE W 2020」ファイナリストに選出されたお笑いコンビ・Aマッソの加納愛子さんが「webちくま」で連載を始めたのは、今から約2年半前のこと。
日常の「何言うてんねん」な出来事をワードセンス溢れる文体で綴ったエッセイが、この度『イルカも泳ぐわい。』(筑摩書房)として書籍化されました。
100%のエッセイを恥ずかしく思い、担当編集者には「何が面白いか分からない」と言われ、ダメ出しされたネタをもとに小説に挑戦し……。初エッセイ集が生まれるまでを振り返ります。
岸本佐知子さんの作品が大好きです
――なんだか意外な気がしますが、文章を書かれるのはこの連載がほぼ初めてだったそうですね。
ちゃんとした文章を書くのは初めてでしたね。ずっとAマッソのネタは書いてきたので、そういう意味では“現実にはないもの(創作)”はずっと書いてきたんですけど。
創作を一切入れない100%のエッセイは、「これだけでいいんかな? 自分のことしゃべっただけやん」って、書き終わった後、めっちゃ恥ずくなりました(笑)。
――もともと歴史小説がお好きだったり、自粛期間にはサミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』(白水社)を読まれたり(!)と本に親しんできた加納さんですが、どんなジャンルの本がお好きなんでしょうか。
岸本佐知子さんの本が大好きです。知り合いの方に「加納さんは、絶対に岸本さんの作品好きだと思います」とおすすめしてもらい、岸本さんのエッセイ(『ねにもつタイプ』、『なんらかの事情』(ともにちくま文庫))を読んだらハマりました。
もともと海外文学は全然読んでこなかったんですけど、このことがきっかけで、岸本さんが翻訳している作品は読むようになりました。たくさん読んでいますが、個人的に一番刺さったのはミランダ・ジュライ。『いちばんここに似合う人』とか『最初の悪い男』(ともに新潮社)とか。感想としては、「やっばー!」って感じでしたね(笑)。
――加納さんのエッセイにも、日常という入り口から不思議な世界に突入する虚実入り乱れた展開や、不条理な笑いがちりばめられているので、岸本さんの作品がお好きというのは納得です。「岸本さんが手がけている作品なら間違いない!」という信頼をもとに本を選ばれているんですね。
本当にそうなんです。以前お会いする機会があった際に、ご本人にもそうお伝えしたくらいです。
――逆に、加納さんのお笑いについて岸本さんから何か感想をいただいたことは?
いや、それは聞くの怖いです!(笑) 岸本さんの書かれる文章は、笑いの感覚がめちゃくちゃあるんですよね。“interesting”という意味の面白さだけではなく、お笑い的にも面白いというか、笑えるので。だからこそ、お笑いについては聞けない。好きな芸人とか聞いてみたいけど(笑)。
2020.11.13(金)
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘