「フライングボートって
本当は飛んでないのよ」

 東西約9キロ、南北約1.5キロの細長い島で、南東部のポルト・ヌオヴォという港町が中心地。碁盤の目のような道に沿って、白やマスタード色のコンクリートの四角い家並みが続いています。メインストリートのローマ通りには土産物店やレストランが並んでいます。

 港近くのレストランでランチをとり、しばらくのんびりしていると、店を切り盛りしているファミリーも、ひとつのテーブルを囲んで盛大に食事を始めました。

 パスタを調理した大きな鍋ごとテーブルにいくつも並べ、わいわいと楽しそう。食事の様子をじっと見ていたら、「食べる?」。数種のパスタと“イリス”というリコッタクリームが入ったシチリアのドーナッツもいただきました。これが美味!

 それから片言英語の会話が始まり、ひとりの女の子が覚えたての英語を使いたいのか、こちらのテーブルに移ってきました。革ジャンを着た、クールな学生さんです。

 でも、発した言葉は「フライングボート、見に来たんでしょ。ねぇ、知っている? あれって本当は飛んでないのよ」。もちろん、宙に浮かんでいるように見えるだけだからね。大人に見えても、実はあどけない13歳の少女でした。

2019.09.07(土)
文・撮影=古関千恵子