#173 Costiera Amalfitana
アマルフィ海岸(イタリア)
南イタリアのソレント半島の南岸、アマルフィ海岸。
世界遺産だからか、映画の舞台になったからか、なぜか、その名の響きだけで、憧憬の念を抱いてしまいます。
ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが愛する妖精を失い、この世でいちばん美しい地に埋葬しようと切り開いたのが、アマルフィ。
その妖精の名前にちなんだ地名だそうです。“世界でいちばん美しい海岸”といわれるゆえんは、この伝説からきているのかもしれません。
約40キロにわたり続く海岸線は、入り組んだ急峻な岩山が海へとなだれ込み、岬が連続した地形になっています。
海沿いの道を車で走ると、カーブを曲がっては次の美しい街が目の前に開ける、の繰り返し。
評判通りの、美しい海岸線です。
陽光に恵まれた穏やかな気候から、傾斜にはレモンやオリーブの段々畑が築かれています。
荒々しい岩山の裏側から湧いた雲がゆっくりと移動して、ティレニア海の上に模様を落としています。
街も美しいのですが、迫りくる岩山の偉容が素晴らしい。
そんなドラマティックな地形も、平地が少ないゆえに、先人たちは活路を求めて海へ進出しました。9~11世紀は漁業や貿易で栄え、共和国にまで発展した時期も。
けれどその後は覇権争いに敗れ、略奪を受け、1343年にはナポリ地震による津波で壊滅的な被害に。さらに平地が少なくなってしまったそうです。
2019.05.25(土)
文・撮影=古関千恵子