バタバタと倒れていく同期や先輩たち
そんなストレスフルな職場環境の中、先輩や同期も次々と心身を病んで職場を去っていく。榎本さんは、当初、回収成績が最下位だったが、優秀な人が辞めていくことで、皮肉にもいつの間にか好成績を出せるようになっていた。
「仕事はそもそも幸せになるための手段のはず。それなのに、優秀な人が、仕事のために心を病んだり不幸になっていくのは絶対におかしいと思いました。もし、気弱でコミュニケーション下手でヘタレな自分でも、手ごわいお客さまから回収できるメソッドを編み出せば、少しはみんなの役に立つんじゃないか。そう考えて、督促方法を研究しはじめたんです」
成績のいい先輩の電話テクをこっそりと聞いたり、いつもニコニコしている先輩のメンタルケアの秘密を聞きだしたり。また、対人関係や心理学の本なども読み漁った。
成果はすぐに表れた。入社1年たたずに、300人のオペレーターを指示し、年間2000億円を回収する部署に最年少で抜擢されたのだ。
それから数年を経た現在も榎本さんは現役督促OLとして活躍中だ。
2012.11.10(土)
photographs:Nanae Suzuki
illustrations:Mami Enomoto