『督促OL 修行日記』(文藝春秋)は、新卒で信販会社の督促の部署に配属されたOL・N本が、多重債務者たちを相手に、日々、格闘しながら、年間2000億円の債権を回収するまでを描いた成長物語。著者である現役督促OL、榎本まみさんに聞く!

 著者へのインタビューと読者のお悩み相談を、2回にわたり掲載します。1回目の今回は、想像を絶する督促OLの仕事や、日常生活でも使える督促のノウハウを榎本さんにインタビュー。2回目は「人と話すのが苦手なのに営業部に配属されて……」「お客様からのクレームにどう対応すれば?」といった読者からの相談に、督促OLならではの視点で答えてもらいました。

» 第2回 現役督促OLが、読者の悩みに答えます!

新卒で督促OLに。
怒鳴られ、脅され、謝る日々

 督促――。CREA読者にはあまりなじみのない言葉かもしれない。具体的にいうと、カードなどを使ってその支払いをしていない顧客に、電話や書面で「入金のお願い」をする仕事だ。

『督促OL 修行日記』の著者、N本こと、榎本まみさんは、大学卒業後新卒で、信販会社に就職し、思いがけず、“督促OL”となった。

「就職氷河期真っただ中で、たまたま入社できたのが信販会社でした。最初は、スーツ着てカードの営業でもするのかな……なんて思っていたのですが」

 ところが、配属されたのは、海千山千の多重債務者や支払い困難者から借金を回収する「督促」のコールセンターだった。当時、その部署に女子社員はゼロ。

「初めて督促の電話をかけた時のことは、いまだに忘れられません。話しはじめようとしたらいきなり、電話口から風が吹いてきそうな勢いで、『テメエ! 今度電話してきたら、ぶっ殺すぞ?』と怒鳴られて、凍りつきました。かける電話、かける電話、ほとんどがこんな調子でした……」

 朝から晩まで、倉庫のようなコールセンターで、1時間に60本がノルマの電話をかけ続ける。すんなり支払う人はほぼなく、怒鳴られたり、脅されたり、泣き落とされたり、嫌味を言われたり……。

 ノルマが達成できないと昼食もゆっくりとれず、夜は食事をする気力すら残っていない。職場に持ち込めるお菓子は“フリスク”だけ。何より、誰からも「ありがとう」と言われない仕事なのがつらかった。

「毎日家に帰ると寝るだけで、洗濯する気力もなく、ついに、毎日、紙パンツをはいて出社していたほど。首から頬にかけてひどいにきびができて、風が吹いても痛いし、毎晩、夜になると謎の熱が出る。入社半年で10キロ痩せました」

『督促OL 修行日記』

置かれた場所で、きれいに咲いた! リアルなOL成長ストーリー

人見知りで気弱なOLが、海千山千の多重債務者を相手にする督促の部署に配属。想像を絶する過酷な職場で、もがき苦しみながら才能を開花させていく様子は、話題のベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)を地でいくストーリーともいえる。
榎本まみ・著 定価1208円(税込)

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2012.11.10(土)
photographs:Nanae Suzuki
illustrations:Mami Enomoto

CREA 2012年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

初めての母になる!

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