カウアイ島のほぼ中央、標高1569メートルのワイアレアレ山の山頂では365日雨が降っている。その降雨量は年間12000ミリを超え、カウアイ島はその豊富な雨によって常に緑に覆われている。別名「ガーデン・アイランド」(庭園の島)と呼ばれる所以である。ワイアレアレ山の雨は5つの川へと流れ込む。その川の中で最も大きなワイルア川は、ハワイ諸島の中で唯一観光用の船が運航できる川である。

タパ柄のユニフォームはスミス・ボートの伝統。ツアーボートや、シダの洞窟でのエンタテインメントはツアーのハイライト

 スミス・ファミリーが1946年からスタートした「シダの洞窟」へのボート・ツアーは、カウアイ観光の名所としてあまりにも有名だ。ワイルア・マリーナを出航したレトロな大型ボートでワイルア川をさかのぼる。この地域は昔、王族や貴族など身分の高い人々しか入ることが許されず、カウアイの最後の王であったキング・カウムアリイもこの地に住んでいた。そのためこの川沿いには、ヘイアウと呼ばれる古代の寺院や建物跡、伝説などが数多く残っている。

 穏やかな流れを上流へと向かうボートの中では、キャプテンがその伝説を紹介してくれる。巨人に成長してしまった魚が島の食物を食い荒らすので、魔法で眠らされてしまい、その巨人が体を横たえる姿だといわれる山、スリーピング・ジャイアント。霊験あらたかなワイルアのポリアフという寺院に祭られた偶像を盗みに入って見咎められ、岩にされてしまったヒナ、その岩が見えるカプ山、ヒナを探して常にこの地域だけを旋回するという白い海鳥、古代には連絡用に使われたといわれる山の頂にあるベル・ストーン……。そんな話を聞きながら、しだいに昔のハワイへと時間をさかのぼって行く。

ワイルア川とツアーボート。1時間20分のツアーは伝説、歌、フラと満足度が高い

 シダの洞窟の入り口で船を下りると、そこから5分ほどトロピカル・ジャングルの中を歩く。太陽の光を通さない鬱蒼としたジャングルを深い緑の空気を満喫しながら歩くと、広いデッキに出る。そこから見上げた高さにシダが垂れ下がる洞窟が見える。1992年のハリケーン以来、シダのボリュームは減ってしまったものの、その昔は高貴な身分のものだけが儀式を行えたという神聖な場所である。

 現在は洞窟の中には入れないが、デッキのある位置がちょうどすり鉢の底の部分にあたり、その天然の円形劇場の音響効果は大きなコンサートホールにも匹敵することから、スミス・ボートの歌手がそこで「ハワイアン・ウエディングソング」を歌ってくれる。周りは洞窟の上から滴る水滴の音と、風の音だけ。素晴らしい音響効果のせいだろうか、なぜかこのラブ・ソングがストレートに心に響く。ここで愛する人と手を取り合うと永遠の愛で結ばれるという。

 帰りのボートの中では、ウクレレやギターの奏でるハワイアン・ミュージックにあわせてフラダンスが披露される。乗客もフラを指導されてみんなで踊るうちに船上のストレンジャーたちもすっかり打ち解け、気がつけばもうマリーナだ。帰りはアッと言う間に「現代」に戻ってきてしまったような、名残惜しさが心に残る。

Fern Grotto Wailua River Cruise
(ファーン・グロット・ワイルア・リバー・クルーズ)

住所 3-5971 Kuhio HWY, Kapaa, HI 96746
電話番号 +1-808-821-6895
料金 大人20ドル、子ども(3~12歳)10ドル
URL www.smithskauai.com/fern_grotto.html

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2012.11.06(火)