ハワイ・リージョナル・クイジーンという言葉を耳にしたことはあるだろうか?

 1991年にハワイの12人のシェフによって確立された料理のスタイルで、ハワイの多様な人種が作り出す多国籍なフレーバーや調理法を使い、地元の新鮮な野菜、果物、肉、魚を積極的に取り入れた創作的な料理のことだ。このごろよく聞く「地産地消」は、20年も前から「ハワイ・リージョナル・クイジーン」のコンセプトだった。

フランス出身のシェフらしいテイストのカラフルで繊細な盛り付け。天然素材の器も好んで使われている

「ハワイ・リージョナル・クイジーン」を確立した12人のシェフの一人、フランス人のジーン・マリー・ジョセリンは、カウアイ島で1990年代に「ア・パシフィック・カフェ」という絶大な人気を誇ったレストランを経営していた。その後セミ・リタイヤした彼だが、「カウアイ島の豊かな土壌に育った素材を使って、もう一度思う存分自分の料理をしたい」そんな思いに駆られ、2011年に再びカウアイ島にレストランをオープン。それが「ジョセリンズ・タパス・バー&グリル」だ。「タパス」とはスペインの小皿で振舞われるアペタイザーのこと。これをレストランの名前に取り入れたのは、色々な種類の料理を分け合い、美味しいお酒を飲みながら楽しい時間をシェアしてほしい、という願いからだという。レストランのあるポイプは高級リゾート地。世界各国からの観光客が集まる場所だが、グルメな観光客にも地元の人々にも人気のこのレストランは常に予約でいっぱいだ。

カリフォルニア・ロールも食感のバランスを考えるとこのようなプレゼンテーションになる

 シェフ・ジョセリンは地元の素材を使うことに徹底的にこだわり、野菜や果物は直接契約した農家から仕入れている。収穫されたばかりの野菜は、調理するときにはまだ「生きている」、だから栄養価が高く、食したときの満足感が違う。牛や羊の肉はフレッシュな牧草を食べて育ったものを仕入れている。牧草は海からの風でわずかに塩気を含み、その牧草で育つ牛や羊は、穀物で飼育したものより2倍から3倍もの必須脂肪酸オメガ3を含み、栄養的にも優れ、肉に深い味わいが生まれるのだ。またハワイの伝統的な食材であるタロイモは、その優れた栄養価から近年注目されている食材だが、ハワイ州で一番の生産量を誇るカウアイ産のタロイモも、彼独自のセンスで新しい感覚の料理になる。

オープン・キッチン前の席は色々なサイズのグループに合うようにテーブルやシートのセットアップが工夫されている

 レストランの中のオープン・キッチンで目を引くのは、カウンター背後の壁に作り付けられている薪を使うオーブンだ。これは、ハワイの伝統的な「イム」と呼ばれる土中のオーブンと同じ原理で調理ができるように、特注でつくらせたもの。そのオーブンの前で忙しく手を動かすシェフ・ジョセリン。カウアイ島の食材やハワイの伝統的な調理法と常に向き合う、彼の「こだわり」が伝わってくるようだ。

Josselin's Tapas Bar & Grill (ジョセリンズ・タパス・バー&グリル)
住所 Kukui'ula Village Shopping Center, 2829 Ala Kalanikaumaka Poipu, HI 96756
電話 +1-808-742-7117
営業時間 17:00~22:00(年中無休)
URL josselins.com

<次のページ> サンシャイン・マーケットで地元の食材と出会う

2012.11.17(土)