島民たちに大歓迎されながら
隠れ家リゾートへ

 「ニヒ・スンバ」への旅は、バリ島のデンパサール空港に到着したときから始まっている。

 空港カウンターではチェックイン手続きをサポートしてくれるうえに、搭乗時間になれば機内までエスコートしてくれるのだ。

 国内線でこんなサービスを受けるなんて、これまでにない贅沢な気分!

 スンバ島のタンボラカ空港から「ニヒ・スンバ」までは、送迎車で約2時間。この間、車窓から見る風景はとても新鮮だった。

 住居はどれも、「精霊が宿る」といわれる伝統的なとんがり屋根がついていて、家々の合間には、まるで遺跡のように巨大な先祖代々の墓が堂々とある。

 2階建て以上のビルはほぼないに等しく、まるでアドベンチャー映画のセットのよう。

 一番驚いたのは、道行く人が、車の中の私たちに向かって手を振ってくれたこと。

 何百年も前の暮らしをかたくなに守っている島と聞いて、怖いイメージもあったけれど、まるで真逆。

 家畜の世話をする人や、馬の手綱をひく人、道端で井戸端会議をしている人……、作り笑顔なんかじゃない、本物のスマイルを向けてくれた。

 山を越え、素朴すぎる村をいくつも通り過ぎた西海岸にある「ニヒ・スンバ」は、まさに、大自然のなかの隠れ家。

 海岸線沿いの山の斜面に、ヴィラやレストラン、ボートハウス、ヨガパビリオン、厩舎などが点々と立っている。

 広い敷地にヴィラはわずか27。デザインはすべて異なり、すべてにプールサイドラウンジ付きのプライベートプールがある。

 ヴィラに一日籠っていても飽きないどころか、これならむしろ、籠りたい!

 滞在をサポートしてくれるのは、ゲストルーム専属のバトラー。

 24時間、彼らとはメッセンジャーアプリの「WhatsApp」を使って容易にコンタクトがとれる。

 リゾート内のどこにいても連絡ができるし、電話よりはるかに気が楽。

 バトラーの多くはスンバ島出身で、島の話もしてくれる。バトラーというより、地元の親友と触れ合っていたような感じだった。

 私が「ニヒ・スンバ」に到着したのは午後4時。ほっと一息をついたら、目の前の海に美しいサンセットが広がり始めていた。

 プールサイドのラウンジと、広い庭の先にひっそりとあるもうひとつのラウンジは、サンセット鑑賞の特等席だ。

 涼しい海風に吹かれながら、ビンタンビールで喉を潤す間、聞こえるのは野鳥のさえずりと波の音だけ。

 夜は満天の星の下、プライベートプールで泳ぐのが最高の時間だった。

2019.04.16(火)
文・撮影=芹澤和美