『一切なりゆき
~樹木希林のことば~』より③
新刊『一切なりゆき~樹木希林のことば~』(文春新書)は、先ごろ永眠した女優・樹木希林が遺した語録だ。生きること、家族のこと、病のことについて、本人が語った思いを集めた本書。噛むほどに心に沁みる樹木さんのことばとは……。
「どんな素材でもそれが光る
場所に置いて活かしたい」
私は服やアクセサリーやインテリアでも、これが好きだというような物がないんですよ。ただその物がある場所、置かれる場所、あるいは纏い方によって活かされるようにしたいと思うだけで、どんなに好きだと思っていても、それが活かされない場所にあったら、うっとうしいだけでしょう。
たとえば今日着てきた私服は、着物の生地を使っているんですよ。この生地は店じまいする呉服屋さんの売れ残りなの。なんか着物にしたら野暮ったくなりそうな柄でしょう。だからこの柄が動いたときにちらっと見える程度にした。そういう風にね、どんな素材でもそれが光る場所に置いて活かしたいと思うんですよ。
(FRaU「この人の言葉は宝物だ!」2002年8月)
2018.12.31(月)
写真=文藝春秋