業界誌での下馬評は高かったが……

 ようこそ、カンヌへ。

 いつの話をしているんだ、と突っ込まれそうだが(そろそろ秋の映画祭&映画賞シーズンだけどね)、ちょうどカンヌ国際映画祭に出品された濱口竜介監督の『寝ても覚めても』が公開されたことだし、先に進む。

 今年のカンヌで是枝裕和監督の『万引き家族』と賞を競ったライバル作品たちについて前回紹介したが、特に批評家たちが絶賛したイ・チャンドン監督の『バーニング』(英題:Burning)が、公式な賞は受賞できずに終わったのは意外でもあり、ある意味ではジンクス通りの結果になってしまった。

 カンヌではいくつかの映画業界誌が毎日、星取り表を出すのだが、「スクリーン・インターナショナル」誌の星取り表では、『バーニング』は4点満点中、国際色豊かな10人の批評家のうち8人が満点をつけ、平均でも3.8点と、過去最高だった『ありがとう、トニ・エルドマン』の3.7点という記録を更新(2位の『万引き家族』は3.2点で全作品のアベレージは2.4点。『寝ても覚めても』がまさに、2.4点だった)。

 この他の業界誌でも『バーニング』は軒並み高得点で、授賞式の直前に発表された、国際批評家連盟(FIPRESCI)賞も受賞した。

 これがくせもので、2年前に『ありがとう、トニ・エルドマン』も同賞を受賞したが、映画祭からの賞は無冠に終わった。FIPRESCI賞発表の際、「これで『バーニング』のパルムドールはないね」と言ったプレスがいて、そのとおりになったのだ。

2018.11.07(水)
文・撮影=石津文子