業界誌での下馬評は高かったが……
![『寝ても覚めても』の濱口竜介監督、主演の東出昌大と唐田えりか。えりかちゃんがレッドカーペットの階段で躓きそうになったとき、速攻で手を差し伸べた東出くん。その紳士ぶりは、和製ヒュー・ジャックマン。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/-/img_d033e6ae1671174efc86f372d540221a175079.jpg)
ようこそ、カンヌへ。
いつの話をしているんだ、と突っ込まれそうだが(そろそろ秋の映画祭&映画賞シーズンだけどね)、ちょうどカンヌ国際映画祭に出品された濱口竜介監督の『寝ても覚めても』が公開されたことだし、先に進む。
![『万引き家族』チームの上映後取材。深夜にもかかわらず、樹木希林さんは、帰り際までコメントをくれる丁寧さだった。「娘(内田也哉子さん)がファンの、マチュー・アマルリックさんと写真を撮らせてもらいました」と喜んでいた。合掌。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/-/img_a36946b7dd52d35fbb82ac6cacf425f3193263.jpg)
今年のカンヌで是枝裕和監督の『万引き家族』と賞を競ったライバル作品たちについて前回紹介したが、特に批評家たちが絶賛したイ・チャンドン監督の『バーニング』(英題:Burning)が、公式な賞は受賞できずに終わったのは意外でもあり、ある意味ではジンクス通りの結果になってしまった。
![日本では『バーニング 劇場版』として2019年2月公開予定。NHKが出資しており、テレビ版もあるためこの邦題になった模様。写真はイ・チャンドン監督に桟橋でインタビューをするマダムアヤコ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/-/img_6730020269b2696bda99fe74c7c52992262478.jpg)
カンヌではいくつかの映画業界誌が毎日、星取り表を出すのだが、「スクリーン・インターナショナル」誌の星取り表では、『バーニング』は4点満点中、国際色豊かな10人の批評家のうち8人が満点をつけ、平均でも3.8点と、過去最高だった『ありがとう、トニ・エルドマン』の3.7点という記録を更新(2位の『万引き家族』は3.2点で全作品のアベレージは2.4点。『寝ても覚めても』がまさに、2.4点だった)。
![「スクリーン・インターナショナル」の星取り表。4ツ星がExcellent(傑作)、3ツ星がGood(良い)、2ツ星がAverage(平均)、1ツ星がPoor(今ひとつ)、×がBad(駄作)。『バーニング』は10人中8人が4ツ星だった。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/-/img_f83c35cc220b85994b17927bb432a21f485610.jpg)
![フランス、ドイツ、中国、英国、タイ、米国、ロシアの映画記者10人が採点。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/2/-/img_82c83569c4b8e0422629112c3db7599e271491.jpg)
この他の業界誌でも『バーニング』は軒並み高得点で、授賞式の直前に発表された、国際批評家連盟(FIPRESCI)賞も受賞した。
これがくせもので、2年前に『ありがとう、トニ・エルドマン』も同賞を受賞したが、映画祭からの賞は無冠に終わった。FIPRESCI賞発表の際、「これで『バーニング』のパルムドールはないね」と言ったプレスがいて、そのとおりになったのだ。
2018.11.07(水)
文・撮影=石津文子