シャンパンとスキューバダイビング

クレイジーケンバンド「あぶく」(04)。このシングルの表題曲は、椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡らが出演した映画『約三十の嘘』の主題歌に起用された。

 彼女との関係で言えば、クレイジーケンバンドには「あぶく」というレパートリーがありますが、実はこのナンバー、ユーミンが87年に発表した「ダイアモンドダストが消えぬまに」から影響を受けているんです。

 ……と言いながら、その事実を自分が認識したのは、曲を作っただいぶ後になってからなんですけど(笑)。

 シャンパンの泡に、スキューバダイビングのスノーケルから立ち昇る泡を重ね合わせる発想は、まさにあのバブルの時代のミューズ、ユーミンならではのもの。

 「あぶく」には、さらにもうひとつインスピレーションの源があります。

シュガー・ベイブ『SONGS』(75)。山下達郎、大貫妙子、村松邦男らを擁する伝説のグループがリリースした唯一のアルバム。「DOWN TOWN」の他、「SHOW」「雨は手のひらにいっぱい」などの名曲を収録。大瀧詠一と山下達郎がプロデュースを手がけている。

 この曲は、アイズレー・ブラザーズの「イフ・ユー・ワー・ゼア」という楽曲のリズムパターンを採り入れているんですが、同じ試みを僕らよりずっと前に行っていたのが、山下達郎さんが70年代に率いた伝説のバンド、シュガー・ベイブ。

 その楽曲「DOWN TOWN」は、EPOさんによるカバーヴァージョンが「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマとして採用されたことでも有名です。

 つまり、「あぶく」は、松任谷由実さんと山下達郎さんのお二人がいなければ生まれなかった。

 その「あぶく」、滅多に他人の曲を褒めないという山下達郎さんもラジオ番組で褒めてくださったというから、ちょっと尋常じゃない感激を覚えました。

 そうそう、彼女の楽曲や歌声について特筆したいのは、窒息感を伴う切なさ。ブレスレスな感じが、胸をかきむしる。それこそ、「ダイアモンドダストが消えぬまに」で歌われたような状況が目に浮かぶんです。

2018.11.22(木)
構成=下井草 秀(文化デリック)