東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在です。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!


#006 松任谷由実(後篇)

(C)文藝春秋
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松任谷由実(まつとうや ゆみ)

1954年、東京・八王子生まれ。72年にシングル「返事はいらない」で荒井由実としてデビュー。76年には松任谷正隆と結婚し、松任谷由実に改名。「ひこうき雲」「あの日にかえりたい」「守ってあげたい」「恋人がサンタクロース」「真夏の夜の夢」など、無数の名曲を世に放つ。これまで発表したオリジナルアルバムは全38作品。2018年、第66回菊池寛賞を受賞。

 1970年代からずっと憧れ続けていたユーミンに直接お目にかかることができたのは、21世紀になってすぐのこと。

 時期は少しずれますが、僕とユーミンは「オールナイトニッポン」の違う時間帯をそれぞれ受け持っていました。その縁もあって、いろいろなラジオ番組で共演する機会が多かったんです。

 最初にお目にかかった時の印象は、今でも鮮烈に覚えています。

 すごく感じがよくて、スターの近寄りがたいオーラはもちろんあるんですけど、ちゃんとこっちの目線に合わせてくれるんです。そして、あいさつはごくごく簡単に済ませて、いきなり本題に入る。

 僕としては聞きたいことがあふれてたんで、一気に質問を浴びせちゃいましたね。

 ユーミンの対応は、否定から入らないのがすごくいい。まず肯定から入って、相手の話を広げてくれる。

 僕がユーミンにシンパシーを感じる理由のひとつに、彼女がシンガーではなく、まず作曲家としてキャリアをスタートしたという事実があります。

 ユーミンは、17歳の時に、元ザ・タイガースの加橋かつみさんに「愛は突然に…」という楽曲を提供したのが音楽業界での初めの一歩でした。

 歌手としての立場以前に、まずは作曲家として音楽出版社と契約を結んでいる。本人としては作曲家志望だったのに、その後、周りに自ら歌うことをすすめられたんですよね。

 僕も、実を言うと歌い手になりたかったんじゃない。裏方の職業作曲家になりたかった。とりあえず作曲のプレゼンテーションの手段として自分で歌うことにしたら、こうなっちゃった(笑)。

2018.11.22(木)
構成=下井草 秀(文化デリック)