貴重なヴィンテージ・プリントなどを含む約300点が展示

 この展覧会ではクラインと森山による50年代から現代までの約300点の作品を展示する。そのなかには貴重なヴィンテージ・プリントやベタ焼き、映画スチル、写真を使ったインスタレーション作品なども含まれている。クラインと森山の写真に共通するのは都市や路上への愛だ。クラインは「ニューヨーク」の後もローマ、東京、モスクワを題材にした写真集を発表。森山は東京の街中を彷徨しつつ、時には地方や海外にまで赴いてシャッターを切り続けた。ふたりの作品は、アヴァンギャルドな視点で捉えられた都市の記録としても興味深い。

Raghubir Singh (1942-1999), Pilgrim and Ambassador Car, Kumbh Mela, Uttar Pradesh, 1977 (C) 2012 Succession Raghubir Singh

 この時期、ロンドンではもうひとつ注目の写真展が開催されている。バービカン・アートセンターでの「すべてが動いていた。:60年代と70年代の写真」展だ。東西の冷戦の激化やスチューデント・パワーの高まりを背景に既存の価値観が大きく揺らいだこの時代、 写真表現のスタイルも大きく変貌した。この展覧会ではブルース・デビッドソン、ウィリ アム・エグルストン、ラグビール・シン、東松照明など12人の写真家をピックアップ。社会の変動を映し出すカメラアイが同時にアートしての写真表現を深化させていったプロセスを見ることができる。個性的な写真表現の数々を通じて、ひりひりするような時代の感覚に触れてみたい。

「ウィリアム・クライン+森山大道」展
開催期間 2012年10月10日~2013年1月13日
場所 テート・モダン(ロンドン)
URL www.tate.org.uk/visit/tate-modern

「すべてが動いていた。:60年代と70年代の写真」展
開催期間 2012年9月13日~2013年1月13日
場所 バービカン・アートギャラリー(ロンドン)
URL www.barbican.org.uk/artgallery/event-detail.asp?ID=13613

Column

世界を旅するアート・インフォメーション

世界各地で開かれている美術展から、これぞ!というものを、ジャーナリストの鈴木布美子さんがチョイスして、毎回お届けします。
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2012.08.13(月)