2016年のJポップを振り返ってみる
山口 さて、年末ということで、2016年のJポップを振り返ってみましょうか? 僕は、YouTubeで爆発したピコ太郎の「PPAP」と、BABYMETALのビルボードへのチャートインという日本人アーティストのグローバルな活躍が記憶に残っていますが、国内に目を向けるとどうですか?
伊藤 個人的には欅坂46の活躍ですね。今年の3月に彼女たちのデビューシングル「サイレントマジョリティ」を取り上げましたが、同年代を意識したアイドルの新しい形としてインパクトのあるデビューでしたね。
山口 作曲家はみんな「サイレントマジョリティ」の驚きを言いますね。
伊藤 2014年の6月には乃木坂46も取り上げているんですが、欅坂46と合わせて坂道系と言われ、どちらも同じSMEなんですよね。そのせいか、この2つのグループは似ているところも多いし、ほかのAKB系グループとは違う毛色をしている。
山口 確かに、ビジュアルの見せ方も違う気がしますね。そして、実はこのコラムではAKB系のグループ・派生ユニット・ソロ多しといえど、取り上げたのはこの2つの坂道系だけですね?
伊藤 そうなんです。この2つの坂道のヒットを予想していました。欅坂46の衝撃のデビュー、そして次々に放つ話題作。乃木坂46も欅坂46の追随を受けながらもCD売り上げを伸ばし、最新作「サヨナラの意味」では初の100万セールスを達成。AKBグループにおいてもこの坂道系が勢いという意味で完全に抜きに出た感じがします。もともとAKB48の公式ライバルというコンセプトで始まった坂道系、筋書通りといえばそうかもしれないけど、なかなかドラマチックな出来事でした。
山口 ファンを巻き込むだけでなく、サウンドプロデューサー、作曲家たちも翻弄するAKBグループは熟成期に入っているのでしょうね。
伊藤 ですね。ところで個人的に、来年のアイドル界は坂道系の独走とみていますが、山口さんはどうですか?
山口 新進アイドルをくまなくチェックできている訳ではないのですが、敬愛する加茂啓太郎プロデュースで、山下達郎も絶賛した「フィロソフィーのダンス」には注目しています。アイドルというフォーマット上はなんでもOKだから、ソウル・ミュージックの2010年代版で、本格的に音楽性で勝負するという考え方も好きです。読者のみなさんもチェックしてみてください。
日本の強みは多様性だと思うので、アイドルとかバンドとか問わずに、グローバルな世界を視野に入れた新しいシーンが出てくることを期待しています。
Column
来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤
音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
2016.12.30(金)
文=山口哲一、伊藤涼