街の胃袋を支える市場とレトロな街角
タワーを降りてから向かったのは、「セント・ローレンス・マーケット」。トロントの胃袋を支える巨大な屋内市場だ。レンガ造りの古い建物は、1803年に造られたもの。ノースとサウスに分かれていて、私が目指したのはサウスのほう。
サウス・マーケットには地上階と地下のふたつのフロアがあり、生鮮食料品から惣菜、キッチン雑貨まで所狭しと並べられている。オーガニック野菜専門の八百屋さんがあったり、様々な種類のキヌアが量り売りされていたり。眺めているだけでも楽しい。
とはいえ、眺めているとあれもこれも欲しくなり、結局、日本に持ち帰れそうなものを選んであれこれ買い物してしまった(笑)。レストランを予約していなかったら、ここで惣菜を買ってホテルで食べれば、レストラン並みの美味しい夕食にありつけたに違いない。
次に向かったのは、「ディスティラリー歴史地区」と呼ばれる一角。大英帝国統治時代の1832年に、帝国最大のウイスキーの蒸留所として建てられた40棟以上もの建物が、レストランやショップ、劇場、ギャラリーなどに生まれ変わった場所で、カナダ最大の歩行者専用エリアでもある。
歩いていると、ビクトリア時代の趣のある建物の一角に、無数の鍵を発見。しかも、「♡LOVE」という文字になっている! と、そこに郊外から来たというカナダ人カップルが。「ふたりでここに鍵をかけると幸せになれるの」と、彼女のほう。ほんのり温かい気持ちにさせられたのだった。
The Distillery Historic District(ディスティラリー歴史地区)
所在地 9 Trinity Street, Suite 200, Toronto, Ontario M5A 3C4
電話番号 416-364-1177
http://www.thedistillerydistrict.com/
そろそろ夕食を予約したレストランに行こうと思って歩き出したら、道端に日本酒の樽が。「なぜここに?」と思ったら、その先に「泉」と看板に書かれたお店があった。中に入ると、なんと、日本酒を造っている!
驚きつつ尋ねると、信州出身の女性杜氏が造っていると聞き、さらにびっくり! 2011年に創業し、トロント郊外の湧き水と、カリフォルニア米を使っている。カナダで日本酒を普及させようと頑張っているのだとか。だからホームページも英語のみ。
右:小さなカウンターでワンショット(おちょこ1杯)を。このほかに、一合と二合のとっくりも用意されている。
さっそく、おちょこに1杯いただいた。原酒、生、荒走りなど、数種類あって迷ったものの、シグネチャーだという「IZUMI NAMA NAMA(泉生生)」をいただいた。フルーティな香りに甘みと酸味が効いている。カナダ人に人気があるという。レストランの予約がなかったら、他の種類もいただきたいところだったけど、名残惜しくも1杯だけで失礼した。
外に出ると、中央の広場にイルミネーションが灯っていた。夕景がもっとも映えるマジックアワーだった。煉瓦造りの建物とワイヤーで張り巡らされたイルミネーションのなんとも美しいこと! 散策していた人たちがこぞって写真を撮り始めたのは言うまでもない。
目の前に広がる美景に見とれていたら、気がつくとレストランの予約の時間が近づいていた。「わわっ、遅刻しちゃうー!」と、タクシーに飛び乗ったのだった。
The Ontario Spring Water Sake Company(オンタリオ泉酒蔵)
所在地 51 Gristmill Lane, Toronto, Ontario M5A 3C4
電話番号 416-365-7253
http://ontariosake.com/
2016.10.29(土)
文・撮影=たかせ藍沙