世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第107回は、大沢さつきさんが、素朴な風景の中に知られざる美味がいっぱいのプリンス・エドワード・カウンティを旅します。

19世紀の街並み残る英国的カントリーサイド

ナイアガラの滝を訪れるツーリストは年間、約1500万人とか。そのうちの約90%が、カナダ側から観光しているという。こちらカナダ滝は落差約54m・幅670m。この左に落差約34m・幅320mのアメリカ滝がある。

 カナダ、オンタリオ州といえばまずナイアガラの滝。去年の夏から直行便が飛びはじめたトロント、そして首都のオタワが有名だ。で、観光でいったらダントツ、ナイアガラの滝なのだが、オンタリオ湖の北東岸にあるプリンス・エドワード・カウンティがただいま要注目!

 プリンス・エドワードというと、『赤毛のアン』で知られるカナダ東端の島が有名だが、こちらは内陸、トロントから車で約2時間のところにある。近年、おいしいワインがつくられるようになったこの地区は、トロント市民が週末を過ごすエリアとしても知られている。

プリンス・エドワード・カウンティの中心地ピクトンの小さな港。なんとものどかな港には、漁船ありレジャーボートありで、みんな思い思いの時間を過ごしている。
プリンス・エドワード・カウンティを巡る「ロイヤリスト・パークウェイ」は、快適なドライブルート。昔ながらのたたずまいを残す小さな街や静かなビーチなどがときおり顔をのぞかせる。

 そもそもこの辺りは、プリンス・エドワードという名前からもうかがえるように、18世紀、独立戦争を嫌う英国王党派「ロイヤリスト」たちがアメリカから移り住んだところ。なだらかな起伏の地に広がる田園風景や、海のように広がるオンタリオ湖の景観が美しい場所だ。英国のカントリーサイドを思わせる素朴な風景は、とても心地よい。

 中心となる街のピクトンでも人口約4000人。5分も歩けば端に行きつくような小さな街ばかりだが、19世紀の面影を残す古い建物がなかなかキュートで散策が楽しめる。中には小洒落たカフェなどもあり、思いの外おいしいケーキを食べることができたり……。

 カントリーサイドの街歩きはやはり面白い。陶芸家や画家、彫刻家などのアーティストも多く住むエリアなので、ギャラリー巡りのルートもある。気になる人はツーリストインフォメーションへ。

19世紀の街並みはレンガづくりの建物とカラフルにペイントされた木造のものが混じっていて、どこか落ち着く。
一軒一軒のぞいて回っても30分もあれば街中の店をチェックできそう。でも、けっこうセンスのよい品があって、ショッピングも楽しめる。

2015.10.13(火)
文・撮影=大沢さつき