世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第103回は、大沢さつきさんが、アウトドアの聖地ユーコンで堪能した大自然、そして新世代コーヒーの味についてレポートします!

見事に色づくユーコンの秋はほんの束の間

オーロラベルト直下に位置するユーコンでは、8月末から春先までの長期にわたってオーロラ鑑賞が楽しめる。その幻想的な光の揺らめきに魅了され、すっかり時間の経つのを忘れる。

 ユーコンといえばアウトドアの聖地。カナダ人も憧れる極北、グレートネイチャーの迫力が堪能できるところ。トレッキング、登山はいうに及ばず、カヌー、キャンプ、マウンテンバイク、アラスカへのロードトリップを楽しむ人も多い。近頃ではオーロラを見に出かける日本人ツーリストも増加中で、バリバリのアウトドア派でない人たちもその魅力に気づきはじめた。

 北緯60度以北(日本の最北端稚内で約45度)から北極圏へと広がるユーコンの秋は、早い。9月、シラカバやポプラが黄金に染まり、トウヒや松といった針葉樹のダークグリーンと鮮やかな対比を見せると、続いてツンドラの原野がレッドカーペットのごとく真っ赤に染まる。

落葉樹が色づきはじめた9月のはじめ。朽ち果てたログキャビンは、かつてゴールドラッシュに沸いた名残。19世紀、ユーコンには金を求めて10万人がやってきたという。
秋になるとカリブー(トナカイ)の角から皮膚が剥がれ落ち、血を滲ませた角が真っ赤になる。そして繁殖シーズンに突入。オス同士角を突き合わせ闘い、繁殖が終わると角は落ち、厳しい冬に備え身軽な体に。
奥の山にはもう雪が。ユーコンの秋は束の間の彩りを見せて、次には白一面の冬がやってくる。
サーモンも体を真っ赤にしながら川を上る。ちなみにキングサーモンの王様と呼ばれるユーコンキングは、およそ3700kmのユーコン川を約60日間で上り、その間何も食べないためにそうとうな脂肪を体内に蓄えている。

2015.09.15(火)
文・撮影=大沢さつき