世界で最も住みやすい都市として知られるバンクーバーは、柔らかな稜線を描く山々と穏やかな海とに囲まれた美しい街。市内には広大な原生林を有する公園があり、高層ビルの合間からは緑深い森が顔をのぞかせる。氷河を抱いた山岳地帯も間近。車を2時間も走らせれば、世界有数のマウンテンリゾートとして知られるウィスラーにも行ける。

 人と自然が緊密な関係を保つこの街では、自然は保護するためだけのものでなく、さまざまなアクティビティを通して触れ、感じるものだ。数千年も前から大自然と共存してきた、ネイティブ・カナディアンの生き方が形を変えて、バンクーバーでのライフスタイルになっている。

何もないようでいてすべてが整うグランピング

Clayoquot Wilderness Resort(クレヨコット・ウィルダネス・リゾート)

天空のキャンプ。バンクーバー島のリュクスなキャンプ、「クレヨコット・ウィルダネス・リゾート」の中でも特別な“クラウドキャンプ”。偉容を誇る、標高約1500mのアーセス山(巨熊の意)の山頂に、一組のカップルのためだけに用意される。3つのテントは寝室、ダイニング、スパ用で、専属のシェフとガイドとセラピストがかしずいてくれる。プライベートな湖まで備えたこのキャンプ、夜には満天の星の下、ロマンティックこの上ない時間が訪れる。

 “5ツ星の大自然リゾート”をコンセプトに生まれたクレヨコットはバンクーバーから水上飛行機で約50分のフライト、セーリッシュ海をはさむバンクーバー島の静かな入り江に広がる。ラスティックでインティメート、そして少々ノスタルジックな世界は入念に調えられた超ラグジュアリーなキャンプだ。

リゾート前の静かな入り江をパドルボードでしずしずと行く。水面を滑るような感覚がたまらない。
カウボーイになるのが夢だったジョン。リゾートには40頭の馬がいて乗馬も楽しめる。初心者でもいきなり森に分け入り、面白みのない馬場での訓練はスキップ!

 いまでこそ日本にもグランピングをうたう施設が建ちはじめたが、世界で話題になったのが約10年前。ワイルドライフを楽しみながらも、便利で都会的、機能的な生活環境は確保する、それもこの上なくアップスケールにといったコンセプトが人気を博した。

 ここクレヨコットはさらに遡ること10年前。ワーナー・ブラザースなどの音楽業界で、ハイライフを満喫していたジョン・ケイトンの一念発起で誕生した。ジョンは創業者のひとりであり、いまもカウボーイ姿でゲストを迎える。

「大自然を堪能できるリゾートをつくりたかった。あらゆる意味で贅を凝らした、何不自由ないキャンプをね」 

ダイニングルーム棟の周りには個室感覚のダイニングテント。
左:シャワーの付いたラグジュアリー・エンスイートテント。遊び疲れた身体には熱いシャワーが欠かせない。
右:ゲスト用のテントのほかには、TVテント、プールバーテントなども。こちらのテントではチェスなどのゲームが楽しめる。
左:料理にペアリングしたワインも極上。オールインクルーシブだから、安心しておかわり可能が嬉しい。
右:舌の肥えたゲストもうなる料理は美しく、そしてウマイ。

文・構成=大沢さつき
撮影=志水 隆
コーディネーター=長谷川和人