「オイルといえば中東でしょ」

一膳を食べ終わったら、「ニューヨークの夕日」で。

 一膳を食べ終わったら、「これニューヨークの夕日と名付けた食べ方ですがいかがですか」と、ゆかりをかけ、海水を濃縮させた湯をかけ、青菜を散らし、天に梅干しを載せ、山椒オイルを少しだけかけてくれた。

 まあるい塩気がご飯に合う。山椒の香りが満腹の胃袋を刺激して、思わず「もう一膳」と茶碗を差し出した。そして「なぜ山椒オイルなのですか?」と聞いた。

 「オイルといえば中東でしょ。それを訓読みすれば」。楽しい。中東さんのとぼけたような会話に心和らげられ、健やかな食事をいただく。

 これこそが現代人の神経を元に戻す食事なのではないだろうか。

決して便利な場所ではないのに、いま最も予約の取れない店のひとつに。

草喰 なかひがし
1997年4月に開店した割烹料理店。店主の中東久雄さんは1952年、京都生まれ。花背にある摘草料理で有名な旅館「美山荘」に生まれ育ち、少年時代から家業を手伝う(美山荘は兄が継ぎ、現在はその息子が当主)。高校卒業後、本格的に料理修業に入り、「草喰 なかひがし」を開店。摘草料理と白飯をメインディッシュとする“なかひがしスタイル”を確立した。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演し、現在、京都で最も予約の取りにくい店のひとつといわれている。カウンター13席、座敷2つ。

所在地 京都市左京区浄土寺石橋町32-3
電話番号 075-752-3500
営業時間 12:00~13:00(L.O.13:00)、18:00~19:00(L.O.19:00)
定休日    月曜、月末火曜
アクセス 京阪鴨東線出町柳駅下車、車で8分。JR京都駅から車で20分、京都市営バス銀閣寺道下車、徒歩3分
URL http://www.soujiki-nakahigashi.co.jp/

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

Column

マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。

2016.04.07(木)
文・撮影=マッキー牧元