vol.06 京都

京都は割烹料理だけの町ではないのだが……

 京都は年に6回ほど行く。当然目的は、おいしいご飯である。そして少しだけ神社や寺を巡る(巡るというより本当は腹ごなし)。

 おいしいご飯を目的に出かけるのはいいのだけれど、まず思い浮かぶ割烹料理だけでなく、洋食に中国料理、イタリアンにフレンチ、焼肉にステーキと様々な選択肢があって、悩みに悩む。さあどこへ行こうか?

 板前割烹の祖「京ぎをん浜作」、居酒屋「赤垣屋」、おばんさい「ほっこりや」、中国料理なら「ぎをん森幸」か「大鵬」、ステーキは「Le 14e」。ああ、どこに行こうか。嬉しい悩みである。

 2月にも出かける機会があり、また悩みに悩んだが、「草喰 なかひがし」に行くことを決めた。6年ぶりになるだろうか。すっかりご無沙汰である。

炊きたてのご飯とめざし、お新香。こちらが「草喰 なかひがし」のメインディッシュ。

 店に入ると、厨房の真ん中ではベンガラ色に塗られた「おくどさん(かまど)」が構えられ、土鍋がかけられている。今では真似されて、さまざまな店で見られるようになったが、創業された平成9年には、特異だった。

店主の中東久雄さん。

 摘み草料理と名付けられた、早朝に山野で摘み取られた葉類や野菜を中心とした料理、鯉の刺身、「当店のメインディッシュです」と言って出される炊きたての白ご飯と汁、お新香とめざしも、この店だけの料理だった。

 食べていくと体が健やかになっていくような料理は健在である。いや以前よりさらに精度を増して、我々の体を浄化する。何よりおくどさんを眺めながら、料理が作られていく様子を見て、店主・中東久雄さんのダジャレを聞きながらの食事は楽しい。

おくどさんで焼かれたモロコ。

2016.04.07(木)
文・撮影=マッキー牧元