「……こんな話されたら行かざるを得ませんよ」

「来てくれるんでしょ?」

「……こんな話されたら行かざるを得ませんよ」

 Kさんは火の点いたタバコを灰皿に押し付けました。

 数日後、Kさんを含む会社のメンバーたちは、ビニール袋を各々ぶら下げながらAさんのマンションを訪れていました。

「おー、入って、入って!」

 明るい声で出迎えたAさんに誘われるように部屋に入っていく一同。そうして始まった鍋パーティは終始和やかに進んだそうです。

 一通りお酒が回った頃、買ってきたポン酢の小瓶を使い切ってしまったということで、Kさんが率先して近くのコンビニまで追加の買い出しを申し出ました。

 肺に滑り込むような外の冷たさ。

 手早く買い物を済ませて帰路に着いていた時、ふとパーティの楽しさで忘れていた例の隣人の話が頭をよぎったそうです。

 Kさんはマンションが見えてきたところで立ち止まると、ふいに反対側に回ってAさんの部屋のベランダ側を覗いてみることにしました。

 そこで目にしたのは、Aさんの隣の部屋のベランダにぼんやりと立つ人影でした。

(後篇に続く)

次の記事に続く 怪異か人か…狂気の隣人女性に“狙われてしまった”男性が...

Column

禍話

2016年からライブ配信サービス「TwitCasting」で放送されている怪談チャンネル「禍話(まがばなし)」。北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、その後輩であり映画ライターとして活躍中の加藤よしきさんの織りなす珠玉の怪談たちは、一度聞いたら記憶に焼き付いてしまう不気味なものばかりです。