「人を呼ぶのは鍋パーティだけが目的じゃないんだよ」
Kさんの問いにしばらく答えなかったAさんですが、ふいに吸い殻を灰皿に押し付けると、新しくタバコに火を点けながら言いました。
「Kちゃんはもう辞めちゃうし本当のこと話しちゃおうかな……実はさ、人を呼ぶのは鍋パーティだけが目的じゃないんだよ」
「狙っている女子社員でもいるんですか?」
「いや、違う、違う。どうしても人を集めたい事情があるんだよ」
Aさんがそのマンションへ引っ越してきたのは、Kさんがバイトを始める少し前のことでした。
「左隣の部屋は空き家だったんだけど、右隣の部屋には住人がいたんだ」
引っ越しもひと段落ついた頃、こうした風習も薄れているしなぁ……と一瞬躊躇したそうですが、流石にお隣さんくらいには挨拶をしようとAさんは決めたのだそうです。
ピーンポーン!
秋口の肌寒い廊下に響くインターホンの音。
「はぁい」
か細い声と共にドアが開くと、ヘアバンドしたマスク姿の女性がおずおずと顔を出しました。
「急にすみません。あの、隣に今日から越してきた○○です。よろしかったらこれ、つまらない物ですが」
「あぁ、ありがとうございます。よろしくお願いします」
愛想はあまり感じませんでしたが、女性は会釈を返してお菓子を受け取ってくれました。過度な付き合いもせず、お互いストレスのないバランスで接する。Aさん曰く“この程度で十分だな”と思ったそうです。










